日本小児外科学会雑誌
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間欠的高カロリー輸液が各臓器および代謝に及ぼす影響に関する実験的研究
森川 信行遠藤 昌夫羽金 和彦横山 穣太郎石田 治雄北島 政樹
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1995 年 31 巻 4 号 p. 577-588

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抄録

ラットに暗期に輸液を施行した cyclic TPN, continuous TPN を行い, 自由摂取させた control 群と比較して,肝,腎,肺に対する影響を臓器重量ならびに組織学的な日内変化の面から検討すると共に,糖質および脂質代謝の日内リズムに関し血液生化学的に検討した. 体重および肝湿重量に関して, cyclic TPN 群, control 群では暗期に増加し明期に減少する日内変動を認めたのに対し, continuous TPN 群では日内変動を認めなかった. 腎および肺の湿重量に関しては3群とも日内変動を認めず, cyclic TPN 群で肺間質に軽度の浮腫を認めたものの可逆的であることから, cyclic TPN 群においても急速輸液に伴う腎および肺に対する影響は少ないと考えられた. 脂質代謝に関する血液生化学的検討では, cyclic TPN 群において輸液施行中に VLDL の合成が亢進し,輸液休止期に末梢脂肪組織からの遊離脂肪酸の動員がおこるという明瞭な日内リズムが認められ, control 群でも同様の傾向かみられたのに対し, continuous TPN 群では日内リズムは消失し遊離脂肪酸の動員は抑制され VLDL の合成は完遂していた. 肝の組織学的検討から. cyclic TPN 群および control 群では暗期にはグリコーゲンが貯留し明期には減少するという日内変動をとったのに対し, continuous TPN 群ではグリコーゲンの日内変動は消失し,軽度の脂肪沈着が認められた,以上の結果より, cyclic TPN 施行中も急速輸液に伴う諸臓器に対する影響は少なく,血清上の脂質代謝ならびに肝組織上における糖質代謝に関して生理的な日内リズムと同様の日内リズムが認められることから, cyclic TPN は安全でより生理的な静脈栄養法であると考えられた.

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© 1995 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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