日本小児外科学会雑誌
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新生児期手術症例に発症した聴力障害 : 危険因子の検討
窪田 昭男井村 賢治佐野 光仁富永 八千代中井 弘小林 敬米田 光宏小林 美智子中農 浩子
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1995 年 31 巻 4 号 p. 589-596

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抄録
小児外科疾患に対し新生児期に手術を受けた症例に発症した難聴15例について,発症の危険因子を中心に検討した.(1)発症率は約3%であった. これは乳児検診で発見される頻度のおよそ30倍である. (2)先天性因子を有していたのは11例で,家族発生(2例),染色体異常(4例),高額度に難聴合併が報告きれている先天性奇形(9例)の要因の内1〜4個を有していた.これらの症例における難聴は先天性の可能性がある. (3)難聴の発生と関係する可能性が考えられる周術期の合併症を認めたのは10例で,敗血症(4例),黄疸(7例),低酸素血症(5例),代謝性アシドーシス(7例),および甲状腺機能低下症(1例)の内1〜4個の合併症を認めた. (4)難聴を発生し得ることが知られている薬剤を投与されたのは11例で, furosemide単独投与は4例,アミノ配糖体抗生剤単独投与は2例,両者の併用は5例であった.また,10日間以上の人工換気が9例に行われた.これらの合併症及び治療法は難聴の原因あるいは憎悪因子になっていた可能性が高いと考えられた.(5)4症例では上記の先天性因子が認められず,内1例は甲状肺機能低下症を,他の3例は黄疸,代謝性アシドーシスと他に1〜2個の合併症を認め,4例全例か上記の投薬を受けていた. すなわち,これら4例における難聴発生は医原性の可能性が高く,予防可能であったものが含まれているものと考えられた.
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© 1995 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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