日本小児外科学会雑誌
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極低出生体重児の鼠径ヘルニア : 頻度,自然治癒,治療方針について
樋口 章浩長尾 和治松岡 由紀夫上野 美佳子近藤 裕一
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1996 年 32 巻 1 号 p. 24-28

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抄録
極低出生体重児 (出生体重1500g 未満) の鼠径ヘルニアに関する,男女差・発生頻度・自然治癒率などの報告は少ない.今回われわれは,この点を中心に調べ,極低出生体重児の鼠径ヘルニアの手術時期について再検討を加えたので報告する. これまで当科では,極低出生体重児の鼠径ヘルニアに対する治療方針として原則として手術を急がず,手術を行う場合にはできるだけ生後6ヵ月を過ぎて行うように努めてきた. 1983年1月から1990年12月までに当院新生児医療センターを退院した低出生体重児 (2500g 未満) 総数は2352名であった. そのうち1500g 未満の極低出生体重児は696名であり,その中で新生児センター退院時病名にて鼠径ヘルニアを有していたものは47名であった.極低出生体重児の鼠径ヘルニア発生頻度は6.8% (47/696) となり,そのうち男児4.7% (18/379),女児9.1% (29/317) と,女児の方が危険率5% で発生頻度が有意に高かった. 胎児発育曲線でみると,47名中 SFD (small for date) 17名,AFD (appropriate for date) 30名であった. 極低出生体重児の SFD 児鼠径ヘルニア発生頻度は10.6% (17/161)で,AFD 児では5.6% (30/532) であり,SFD 児の方が危険率5% で頻度が有意に高かった. この鼠径ヘルニアを有した極低出生体重児47名に対し,退院後2年から9年の範囲にて,自然治癒に関する聞き取り調査を行った. 回答のあった37名中,自然治癒22名,ヘルニアはあるが経過観察中2名,手術施行13例であった. 極低出生体重児の鼠径ヘルニア自然治癒率は,22/37 (59.5%) となった. 自然治癒率が高く,嵌頓の弊害も少なかったことから,当科の治療方針はほぼ満足できると考えられた.
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© 1996 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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