日本小児外科学会雑誌
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ヘパリン処理された ECMO 回路の検討 : 低流量域での比較実験
佐藤 志以樹金沢 幸夫吉野 泰啓松山 真一井上 仁元木 良一
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1997 年 33 巻 4 号 p. 697-704

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抄録

体外式模型人工肺 (ECMO) の施行上,抗凝固療法に伴う出血傾向は大きな問題点である. 我々は出血傾向の克服のため,ヘパリン処理された人工肺及び回路を用いて,抗凝固剤を使用しない ECMO 装置の有用性を低流量域 (50ml/kg/min) での比較実験を行い検討した. 方法 : 雑種犬16頭を用いて呼吸不全状態の実験モデルを作成し13時間の ECMO 灌流を行った. ヘパリン処理された装置を用い,回路内にヘパリン投与を行わない場合を heparin 処理群 (以下 H 群 : N=8) とし,ヘパリン処理がなされていないことを除き H 群と全く同じ装置で,回路内にヘパリン投与を行った場合を control 群 (以下 C 群 : N=8) として二群間で比較検討した. 結果 : H 群は C 群と同等の良好なガス交換能を有した. C 群では ACT 値を200〜220秒に維持したにもかかわらず創部からの oozing を認めたのに対し,H 群では ACT 値が100秒前後で推移し,出血傾向を認めなかった. また,H 群は低流量域 (50ml/kg/min) の灌流で ECMO 装置そのものには血栓を認めず,良好な抗血栓性を示した. 血小板変化率は両群とも血小板数の減少を認めたが,開始後いずれの時間でも H 群が C 群より高値で3時間以後から有意差を認め,H 群でより良好に血小板数が保たれた. その理由として,H 群は血液接触面上の粘着血小板の数が少なく,形態変化・凝集が少ない特性を有するためと考えられた. 今後の課題として,H 群でみられた血流停滞部位の微小血栓対策と,膜の素材によると考えられる人工肺からの serum leakage (16例中3例) に対する検討が必要と考えられた.

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© 1997 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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