1997 年 33 巻 4 号 p. 705-710
従来より,気道異物における早期診断の重要性は幾度となく強調されてきた. しかし,いまだに早期診断ができない症例が存在する. そこで診断遅延の要因,早期診断の手がかりを知る目的で1985年から1995年までに当科で経験した気道異物15例を,特に両親と初診医の対応に注目し検討した. また比較の意味で消化管異物67例についても検討した. 消化管異物症例の約90% が当科を誤飲後24時間以内に受診していたのに対し気道異物症例では半数以上が誤嚥後2日以上 (最長41日) を要していた. これらの診断遅延は親が誤嚥の可能性を申告しても初診医が取り上げなかった場合と親,初診医とも誤嚥が全く念頭になかった場合に認められた. "咳込む,むせる" といった初発症状が93% の症例に,また誤嚥後に持続する症例も60% に認められており誤嚥を疑う手がかりとして症状に注目すべきと思われた. 医師は,親からの申告がなくとも,経過が通常の呼吸器疾患と異なる場合や,治療に抵抗性の場合は異物誤嚥も疑い問診を繰り返すべきである. また疑わしい症例では気管支鏡検査を施行するべきである.