2002 年 38 巻 1 号 p. 52-58
神経芽腫は小児悪性固形腫瘍の代表的疾患であるが, 同時多発発生の報告は稀である.今回われわれは, 神経芽腫マススクリーニング(以下, MSと略す)検査にて発見された多発性神経芽腫の1乳児例を経験した.症例は6カ月, 男児.神経芽腫MS検査陽性で神経芽腫を疑われ, 当科へ紹介された.画像診断にて右後縦隔, 右後腹膜に腫瘍を認め, 各々腫瘍摘出を行った.両腫瘍間に連続性はなくリンパ節転移もなかった.腫瘍の病理所見は花冠細線維型, favorable histologyで, 同時多発性神経芽腫(Stage I)と診断した.生物学的にも予後不良因子はなく, 術後3カ月間James療法を行った.現在術後9カ月目になるが, 無病生存中である.同時多発性神経芽腫は稀であり, その特徴について若干の検討を加えた