2002 年 38 巻 7 号 p. 1046-1051
【目的】鎖肛術後排便機能を検討することにより, PSARPが適切な術式かどうか評価し今後の問題点を明らかにすることを目的とした.【方法】1973年1月から1998年12月までの26年間に当教室にて経験した鎖肛66例のうちcut back術以外の根治術を施行し外来経過観察可能であった35例を対象とした.1989年以降は19例にPSARPを行い, それ以前の術式を施行した16例における排便機能と比較した.【結果】術後排便機能に影響する因子(椎骨奇形, 縫合不全, 精神発育障害の有無及び術後年数)に関しては, 術後年数以外に両者の間に有意差はなかった.高位鎖肛11例(直腸膀胱瘻4例, 直腸尿道前立腺部瘻5例, 総排泄腔2例)のうちPSARPを行った6例のscoreは4.7±2.0とそれ以前の5例のscore (2.6±0.5)に比し有意に(p=0.0492)良好であった.特に失禁, 汚染は有意に少なかった.中間位鎖肛16例(無瘻型1例, 直腸尿道球部瘻10例, 総排泄腔2例, 直腸腟瘻2例, 直腸腟前庭瘻1例)のうちPSARPを行った9例のscoreは6.4±1.0とそれ以前の7例のscore (3.7±0.5)に比し有意に(p<0.0001)良好であった.低位鎖肛8例については肛門腟前庭瘻7例について検討した.PSARPを行った3例のscoreは6.3±0.6であり, Potts手術を行った4例のscoreは6.3±0.5で, 両者の間に有意差はなかった(p=0.8457)が, いずれも便秘で苦労する症例が多く, 排便score低下の原因となっていた.【結論】(1)高位鎖肛においてはPSARPにより比較的良好な排便機能が得られた.特に失禁, 汚染は以前の手術より有意に少なく, 良好なQOLが得られた.(2)中間位鎖肛においてはPSARPにより便意, 便秘, 失禁, 汚染のすべての要素につき以前の手術より良好な結果が得られた.(3)肛門腟前庭瘻においてはPSARP, Potts手術後排便機能に有意差はなかったが, いずれも便秘で苦労する症例が多く今後再検討すべき課題と考えられた.