日本小児外科学会雑誌
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移動精巣の経過観察中にみられたascended testis(精巣拳上症)
志関 孝夫伊藤 泰雄韮澤 融司渡辺 佳子
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2003 年 39 巻 4 号 p. 593-597

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抄録

【目的】移動精巣の経過観察中に精巣の挙上を認めたascended testis(精巣挙上症)の検討から,精巣位置異常症の診断基準や治療方針を検討する.【対象および方法】1999年1月から2002年6月までに精巣の位置異常で来院した140症例(194精巣)のうち,移動精巣ないし停留精巣0度(陰嚢高位停留精巣)の診断で経過観察とした65症例(106精巣)を対象とした.病歴から,初診時ならびに経過観察中の診断,精巣の挙上時期,手術時期,手術方法などを検討した.精巣位置異常の診断は新たに定義した当科独自の診断基準を用い,小児外科指導医が行った.【結果】ascended testisの診断で治療を要した症例は5症例(6精巣)であった.その内訳は,移動精巣が経過観察中に停留精巣に変更されたもの3症例4精巣(症例1,4,5),停留精巣0度が後に停留精巣I度の停留精巣に変更されたもの2症例2精巣(症例2,3)であった.【結論】移動精巣の中に,その後精巣挙上を認め停留精巣となった症例があり,移動精巣は経過観察が必要である.精巣牽引にて精索の緊張がある場合(停留精巣0度)は,外科的治療を要する可能性が高い.全麻下で陰嚢上部に精巣が認められる場合,精巣固定は経陰嚢的に行うことができる.

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