2003 年 39 巻 4 号 p. 598-602
我々は,頸部腫瘤として気づかれた頸部迷入胸腺2症例の正常胸腺組織を摘出した.頸部迷人胸腺組織は,免疫機能に関連すると考えられ,温存すべきと思われる.頸部腫傷との鑑別を中心に文献的考察を加え報告する。症例1は1歳2か月の男児.生下時からの左頸部腫瘤で,当行外来でフォローアップした.神経線維腫の診断のもと摘出した.症例2は,生後2か月の実兄.新生児期からの右頸部腫瘤で,顎下線由来の腫傷として摘出した.2症例とも病理組織学的に、胸腺組織と診断した.本邦で頸部迷入胸腺症例の報告は,23症例あり,正常胸腺組織による頸部腫瘤発症例は12例であった.この12症例の全例が,頸部正中三角部に腫瘤を認めた.当科で経験した157例の頸部正中三角部腫瘤の検討から,頸部迷入胸腺は,経過、触診所見,画像診断と腫瘤の針生検によって、ほぼ鑑別し温存し得るものと思われた.