抄録
今回我々は,外傷性膵損傷(I型)にて保存的治療中に四肢末端の腫脹,発赤,及び骨病変を来たした稀な1例を経験したので報告する.症例は,6歳男児で母親の運転する車の下敷きとなり,来院した.腹部CTにおける膵体部の挫傷の所見と血清アミラーゼ値の上昇を認め,外傷性膵損傷と診断し,保存的治療を開始した.第27病日には,血清アミラーゼ値3,549IU/lにまで上昇し,同時期より四肢末端の腫脹,発赤が出現し,同部位の単純X線写真で骨融解の所見を認めた.保存的治療を継続したが,これらの症状は改善せず,第42病日にMRCPを施行したところ,主膵管の狭窄及び横行結腸間膜内に嚢胞性病変を認めた.第44病日に膵嚢胞切開ドレナージ,第50病日にLetton-Wilson法に準じた手術を施行し,四肢末端の腫脹,発赤及び骨病変はともに改善した.