抄録
症例は1歳1ヵ月,女児.発熱,食思不振を契機に腹部腫瘤,黄疸で嚢胞型の先天性胆道拡張症と診断された.胆管は巨大な嚢胞状を呈し肝内胆管の拡張をともなっていた.術前の画像診断や術中造影で膵管と胆管の合流形態を明らかにすることはできなかったが,非薄化した膵組織を嚢胞壁から慎重に剥離することにより膵管を損傷することなく拡張腸管を切除することができた.本例は生後2ヵ月から間歇的な灰白色使があり,成長障害(体重は-2SD)を認めること,また病理組織学的に肝硬変が認められたこと等からすでに乳児期早期には発症していたものと考えられた.乳児期の嚢胞型先天性腸道拡張症の発生とその外科治療に関し示唆に富む症例であると考え,文献的考察を加え報告する.