日本小児外科学会雑誌
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Hirschsprung病の診断と治療の変遷 : 全国アンケート調査1998〜2002年より
水田 祥代田口 智章家入 里志中辻 隆徳
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2004 年 40 巻 5 号 p. 718-736

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抄録

本邦におけるHirschsprung病の診断と治療の現状を知る目的で,日本全国主要小児外科196施設に1998〜2002年までの5年間の症例のアンケート調査を依頼した.159施設(81.1%)から回答をいただき,1,103例の症例を集計しえた.以前教室で行った1978〜1982年(I期)と1988〜1992年(II期)の調査結果と今回1998〜2002年(III期)の結果とを比較検討した.発生頻度,性別,無神経節領域の頻度は前2回とほぼ同じであったが,III期では低出生体重児の比率,家族発生率,合併奇形の頻度が増加した.診断法は直腸粘膜生検によるコリンエステラーゼ染色がI期28.7%,II期62.1%,III期74.8%と経年的に増加していた.またIII期では遺伝子検索が23例に施行され4例(17.4%)に異常がみられた.術前腸炎の合併は,I期29.2%,II期29.1%,III期17.3%とIII期が著明に減少し,術前腸炎合併例の死亡率も6.5%,4.9%,0.7%と低下した.手術に関しては,人工肛門造設率が経年的にI期68.7%,II期59.3%,III期35.2%と減少し,一期的根治術が増加していた.根治術の平均日齢はI期564.8日,II期464.7日,III期368.1日と経年的に低年齢化し,生後4ヵ月未満に根治術を行った症例がI期の6.6%, II期の9.9%に比してIII期は26.8%と著明に増加していた.III期の根治術式はTransanal endorectal pull-through (TAEPT)とZ型吻合術が2大術式で,それぞれ28.6%と27.2%であった.以下Soave法18.6%,Duhamel法14.9%,Swenson法3.7%であった.なおIII期では腹腔鏡使用は全体の29.7%にみられ,TAEPTや腹腔鏡手術などの非開腹手術が42.6%を占めた.術後腸炎はI期17.9%,II期16.8%,III期10.6%と経年的に減少し,全症例での死亡率はI期7.1%, II期4.9%,III期3.0%と経年的に改善した.全結腸以上に及ぶ症例についてみると全体に占める割合および発生率はI期からIII期までほぼ同様であった.全結腸型の死亡率はI期40.0%, II期21.5%,III期15.8%と著明な改善をみたが,小腸型,特にTreitz bandより70cmをこえる症例ではIII期でも死亡率が83.3%と高く治療の限界と考えられた.根治術式としてはMartin法などのパッチを用いた術式が減少していた.

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