2007 年 43 巻 1 号 p. 32-36
【目的】最近の小児鼠径ヘルニアの臨床像と治療方針,対側出現の頻度と対策についてのアンケート調査結果を報告する.【対象と方法】九州地区において小児外科診療を行っている24施設に小児鼠径ヘルニアに関するアンケート調査を行った.その内容は,2001年から2003年までの3年間における鼠径ヘルニア手術例の性,年齢,部位別の症例数,術式,対側検索の実施数と陽性数,および2001年から2005年6月までの対側出現例に関する詳細についてであった.フリーコメントとして術式選択と対側検索のポリシーについても尋ねた.【結果】24施設の3年間の小児鼠径ヘルニア症例数は計5,686例であった.手術時の年齢層では1〜3歳児が最も多く,男女比は1.3:1,左右差は男児でやや右側に多く,男女とも両側同時例が約10%であった.術式は95%の症例でPotts法が行われていた.対側出現については333例が集計された.初回手術から対側出現までの平均期間は18.5±20.3カ月(術後4時間〜10年)で初回手術後3年以内に90%の症例が発症していた.対側検索の施行等により対側出現の頻度が低い6施設を除いた18施設における対側出現の頻度は5.6%(192/3,454)で,年齢,性別,初回手術の患側による差が認められた.対側出現の頻度が高いのは,1〜3歳の女児で初回手術が左側の場合が13.6%と最も高く,乳児男児で初回手術が左側の場合が10%で続いていた.男女とも4歳以上では対側出現の頻度は低くなった.対側予防は20施設では基本的に行っておらず,予防のための対側検索の方法では腹腔鏡を利用する方法が4施設と最も多く,すべての対側検索の陽性率は,34.1%(160/469)であった.