抄録
症例は日齢19の女児で,日齢16に家人が頚部腫瘤に気づき当科を受診した.受診時左顎下部に約3cmの腫瘤を触知し,当初血管腫が疑われ経過観察となった.生後6か月時の頚部MRT検査では嚢胞性疾患が疑われ経過観察となった.以後も特に変化なく経過した.生後10か月時,超音波検査では初診時と同様に3.3×1.6cmの筋組織よりやや高い輝度を有する充実性腫瘤を認めた.1歳8か月時の頚部MRI検査では耳下腺下部に接して内側は頚動静脈に接する実資性腫瘍と判断された.確定診断および治療目的に外科的摘出術を施行した.腫瘍は薄い被膜を有し,軟であり剥離は比較的容易であった.術後特に問題なく,2年を経過し再発を認めていない.術後病理組織検査にて異所性胸腺と診断された.小児頚部腫瘤に際しては新生児期であっても異所性胸腺を念頭におくべきであり,MRI検査における存在部位が術前診断に非常に有用であると考えられた.