日本小児外科学会雑誌
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メッケル憩室症の超音波画像
高野 洋一安福 正男
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2008 年 44 巻 5 号 p. 661-666

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抄録

【目的】メッケル憩室は小児外科領域においてよく遭遇する消化管奇形である.メッケル憩室症は下血,腹痛,イレウス,腸重積などの多様な症状を呈するため,しばしば診断に難渋することも経験する.メッケルシンチが最も信頼性の高い検査法であるが,下血による貧血や異所性胃粘膜を持たない症例では偽陰性となることも少なくない.そこで今回,メッケル憩室に対する超音波検査の有用性を検討した.【方法】2003年から2006年までの4年間に当科で経験したメッケル憩室を有する患者,9例中術前超音波検査が施行された8例に対し後方的にメッケル憩室か否かの術前診断の有無,超音波画像と術中所見の関係,メッケルシンチとの関係を検討した.【結果】メッケル憩室に伴う症状のなかった2例とイレウスを呈していた1例ではメッケル憩室の存在を術前の超音波検査では指摘できなかった.またこの3症例ではメッケル憩室の存在を疑わなかったためメッケルシンチは行っていない.その他の有症状の5例では術前に超音波検査でメッケル憩室と診断をすることができ,それぞれ特徴的な超音波像を呈していた.これら症例ではそれぞれ,(1)内部に高エコー層,その外に低エコー層を持ち腸管と連続する嚢胞性病変を呈したもの,(2)臍部と腸管の間に連続するもの,(3)穿孔し偽性嚢胞を形成したためsnowman's appearanceを呈したもの,(4)腸重積の先進部として観察されたものであった.なお症状を有した5例中4症例にメッケルシンチを施行しているが1例は偽陰性であった.【結論】メッケルシンチは精度が高く有効な術前検査法であるが,メッケル憩室症の術前診断として超音波検査も有用であると考えられた.また,メッケル憩室症の超音波像についての報告例は少ないが,メッケル憩室は超音波上も特徴的な画像を呈し,その超音波像を知ることは臨床上必要であると考えられた.

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