2008 年 44 巻 5 号 p. 728-731
重症筋無力症は病態に胸腺が深く関わっており胸腺摘出術の効果が確立されている.そのアプローチはさまざまであるが低侵襲であることを利点に胸腔鏡下胸腺摘出術が行われ報告されてきた.本邦では小児の重症筋無力症に対して補助切開を置かずに胸腔鏡下胸腺摘出術を施行した報告はなかったが,今回12歳女児に発症した重症筋無力症に対して完全胸腔鏡下の本術式を経験した.手術は分離肺換気下に2本のワーキングポートと1本のカメラポートを挿入して左胸腔から縦隔に到達した.視野は良好で大きな問題なく胸腺を全摘することができた.手術時間は196分,出血量は150mlであった.術後も合併症なく経過した.胸腔鏡下胸腺摘出術は胸骨正中切開による胸腺摘出術と変わらない成績が報告されており,低侵襲,美容の観点からより有利な手術であり,標準的な治療となり得るか症例を重ね検討する価値がある.