日本小児外科学会雑誌
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脳室腹腔内シャントを留置している重症心身障害者(児)に対する腹腔鏡下噴門形成術+胃瘻造設術
黒部 仁大橋 伸介芦塚 修一吉澤 穣治大木 隆生
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2009 年 45 巻 6 号 p. 937-941

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抄録

【目的】重症心身障害者(児)(以下NIP)の胃食道逆流症に対し,腹腔鏡下噴門形成術+胃瘻造設術が広く行われている.NIPの中に脳室腹腔内シャント(以下VPシャント)を留置している症例をしばしば認め,VPシャントに対する気腹の影響やシャント感染などが問題となる.VPシャントを留置するNIPに対する腹腔鏡下噴門形成術+胃瘻造設術の安全性を検討した.【方法】2003年12月〜2008年1月までにVPシャントを留置したNIPに対し噴門形成術+胃瘻造設術を施行した7例(開腹下3例,腹腔鏡下4例),および,同時期に腹腔鏡下噴門形成術+胃瘻造設術を施行したVPシャントを留置していないNIP25例を比較対象とし,retro-spectiveに検討した.【結果】手術の第1例目は気腹による腹腔内圧上昇に伴う頭蓋内圧の亢進やシャント感染などを危惧し,外シャントにしてから手術を施行した.2例目からはシャントをそのままとして腹腔鏡下に手術を施行した.トロッカー挿入および術中操作時のシャント損傷に注意し,気腹圧は8〜10mmHgとした.VPシャント留置に伴う癒着は軽度であり,腹腔鏡操作は可能であった.胃瘻造設時にもシャント損傷に注意し,胃内容が腹腔内にこぼれないよう注意した.VPシャント非留置例と比較すると,手術時年齢・体重,手術時間・出血量に統計的有意差を認めず,術後シャントトラブルや脳疾患の悪化した例はなかった.【結論】術前から起こりえる合併症を予測し,十分な注意,対応を行えば脳室腹腔内シャントを留置した重症心身障害者(児)の胃食道逆流症に対しても安全に腹腔鏡下噴門形成術+胃瘻造設術を施行できる.

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