日本小児外科学会雑誌
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原著
当院における遅発性先天性横隔膜ヘルニア症例の検討
古川 泰三木村 修樋口 恒司文野 誠久青井 重善田尻 達郎
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2013 年 49 巻 5 号 p. 975-980

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抄録
【目的】先天性横隔膜ヘルニア(congenital diaphragmatic hernia: CDH)の中で生後30 日以降に診断される遅発性CDH は生後24 時間以内発症症例に比べ予後が良いとされているが発症後の診断が遅れることにより致死的な状態となることがある.今回,当科において経験した遅発性CDH について検討した.
【方法】1987 年1 月から2010 年12 月までに当院にて治療したCDH(bochdalek hernia)86 例のうち遅発性CDH であった10 例(11.6%)を対象とし,発症時期,初発症状,発症から診断に至るまでの時間,脱出臓器,ヘルニア囊の有無,予後について検討した.
【結果】遅発性CDH 10 例における診断時年齢の中央値は1 歳4 か月(生後76 日~15 歳)であった.初発症状は呼吸器症状が3 例(30%)であったのに対し消化器症状が6 例(60%)にみられた.発症から診断までの期間は平均4.2 日であった.脱出臓器は全例に消化管の脱出を認め,肝臓脱出は認められなかった.10 例中9 例は合併症なく救命しえたが,1 例は前医から当院へ搬送中に心肺停止をきたし死亡した.
【結論】新生児症例と異なり遅発性CDH では消化器症状で発症することが多く,診断までに時間がかかる場合がある.重篤な症状をきたす症例は少ないが,中には診断されるまでに脱出臓器の穿孔から急激に胸腔内圧が上昇し,心肺が圧迫されることによりショック状態となるような症例もあるため,小児の消化器症状においても本疾患が疑われた場合は早急に胸部画像検査を施行し,経鼻胃管挿入を早急に行い,胃の減圧を図るべきである.
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