【目的】尿膜管洞は臍部の感染を契機とし,年長児,成人での発症が多い.炎症消退後に尿膜管洞摘出術の適応があるか否かについて検討した.
【対象と方法】2008 年から5 年間に経験した尿膜管洞15 例を対象とし,診療録により治療経過などについて検討した.超音波検査などにて尿膜管遺残を,膀胱造影などにて膀胱との交通性を評価して尿膜管洞を診断した.
【結果】症例は平均19.3 歳(5~31 歳),男性14 例,女性1 例.症状は臍部痛,臍の発赤・腫脹が15 例,排膿が12 例と多かった.超音波検査では索状構造を含めた尿膜管洞の長さが平均30.7 mm(14~75 mm)で,全例に炎症所見を認めた.治療は経口的に8 例,経静脈的に7 例に抗生剤投与を施行した.臍部の肉芽形成例3 例ではリンデロンVG 軟膏
® 塗布により肉芽が改善して排膿可能となり,筋層下まで膿瘍のあった4 例で8Fr ネラトンチューブ挿入により排膿でき,7 例で切開排膿を行ない,全例軽快した.15 例中4 例で尿膜管洞摘出術を行ない経過良好である.残り11 例で平均28 か月観察中であるが,感染再発,癌の発症はない.尿膜管摘出術施行4 例の病理組織学的所見は,すべて重層扁平上皮または線維性結合組織であり,腺組織を認めなかった.
【結論】尿膜管洞の全15 例とも排膿されて軽快し,感染の再発を認めず,ドレナージが可能であった症例における再感染防止目的での尿膜管洞摘出術は,検討の余地があると思われた.また,尿膜管洞摘出例の摘出標本には腺組織を認めず,報告されている尿膜管癌の多くは膀胱近傍に発症する腺癌であることから,癌予防目的での臍近傍を中心とした尿膜管洞摘出術の適応も症例を重ねて検討の余地があると思われた.
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