小児虫垂炎は, 虫垂炎の中では頻度の比較的低いものであるが, 小児腹部外科では最も多く扱われる疾患の一つであり, 古くから数多くの研究報告がなされて来ている。一般に小児虫垂炎は, 成人に比して重篤なものが多いと云はれ, その原因については, 診断のむずかしさによる手術時期の遅延, 更にこれに加えて解剖学的関係から炎症が限局化され難いこと等が, 指摘されている。しかるにその病理組織学的特徴についての報告は少ない。そこで私共は, 昭和35年から同41年の7年間に経験した満15歳未満の小児虫垂炎56例について病理組織学的に詳細に検討し, 合わせて臨床的事項をふり返ってみた。