日本小児外科学会雑誌
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原著
出生前診断された肝門部囊胞性病変の検討
大倉 隆宏後藤 隆文中原 康雄片山 修一真子 絢子久守 孝司岩村 喜信河﨑 正裕秋山 卓士青山 興司
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2015 年 51 巻 4 号 p. 799-803

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抄録

【目的】胎児超音波検査で肝門部に囊胞を認めた場合,先天性胆道拡張症(congenital biliary dilation: CBD)と胆道閉鎖症(biliary atresia: BA)が鑑別に挙げられるが,胎児期はもとより新生児期においても両者の鑑別は難しい.今回,出生後早期の両疾患鑑別の可能性について検討した.
【方法】2000 年4 月から2013 年10 月までに,当該4 施設において胎児超音波検査で肝門部囊胞性病変が発見された症例を対象とした.術中所見および胆道造影検査により症例をBA もしくはCBD と診断し,診断に基づいてBA 群とCBD 群に分類した.両群間における術前の超音波検査,血液生化学検査結果を後方視的に比較した.
【結果】症例は10 例,内訳はBA 群6 例(Type I-cyst 4 例,Type IIId 2 例),CBD 群4 例であった.出生後早期(生後7 日以内)の直接ビリルビン(D-Bil.)最高値は(2.7±0.5 mg/dl vs 0.5±0.1 mg/dl, p=0.0001)とBA 群で有意に高値であった.出生後早期のAST,ALT には両群間で有意差を認めなかったが,BA 群では日齢20 頃を過ぎると急激な上昇傾向に転じていた.
【結論】胎児期に肝門部囊胞性病変を認めた症例において出生後早期よりD-Bil. の上昇を認めた場合,BA の可能性が高いことが示唆された.したがってそのような例ではBA を念頭に置き時期を逃さず手術を行うべきである.

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