日本小児外科学会雑誌
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原著
13・18トリソミー症例の小児外科疾患に対する積極的医療介入の妥当性
薄井 佳子小野 滋馬場 勝尚辻 由貴河原 仁守福田 篤久
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2015 年 51 巻 5 号 p. 868-872

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抄録

【目的】13・18 トリソミーの治療方針は各施設に委ねられている.自施設では積極的な外科治療も行う方針としており,その妥当性について検討した.
【方法】2008 年1 月から2014 年6 月に,当院NICU に入院した13・18 トリソミー21 例を対象として後方視的に解析した.
【結果】全例が出生前に超音波検査で胎児異常を指摘され,染色体異常の出生前診断は9 例(42.9%)に行われた.出生後,11 例(52.4%)に小児外科疾患が診断され,内訳は腸回転異常(症)4 例,食道閉鎖症2 例,胃食道逆流症2 例,横隔膜ヘルニア1 例,肝芽腫1 例,低位鎖肛1 例,臍帯ヘルニア1 例,鼠径ヘルニア1 例であった.根治術を施行した腸回転異常症2 例と食道閉鎖症1 例は,在宅で2~5 年の長期生存中である.肝芽腫1 例は,積極的治療希望であったが,体重4 kg 台で心奇形合併があり治療困難と判断され緩和ケアに移行した.食道閉鎖症1 例,低位鎖肛1 例,臍帯ヘルニア1 例は,姑息的手術を選択した.長期に気管挿管された4 例には気管切開術を施行した.心奇形は20 例(95.2%)に合併し,3 例に心内修復術や肺動脈絞扼術が施行された.主に心疾患の重症度が予後を規定しており,新生児集中治療と心疾患に対する治療選択により経過が左右された.一方,小児外科医による外科治療は生命予後に直接関与することは少なく,予後不良症例に対する姑息的手術も患児と家族の時間を妨げるものではなかった.
【結論】近年13・18 トリソミーの長期生存例が着目されるようになり,個々の病状に応じた治療が必要とされる.客観的な医学的評価に基づいた積極的な外科治療の提供は倫理的にも妥当である.

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