日本小児外科学会雑誌
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原著
心疾患を合併したC型食道閉鎖症に対する術式の検討
―ASD,VSD合併症例に対する胸腔鏡手術と開胸手術の比較―
矢本 真也福本 弘二納所 洋三宅 啓金城 昌克中島 秀明小山 真理子漆原 直人
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2015 年 51 巻 5 号 p. 873-878

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抄録

【目的】C 型食道閉鎖症の術式選択として胸腔鏡手術の適応は拡大している.しかし,心疾患合併例についての胸腔鏡手術の適応に関してはcontroversial である.今回,比較的頻度の高い心房中隔欠損症(ASD),心室中隔欠損症(VSD)を合併したC 型食道閉鎖症に対しての胸腔鏡手術の有用性を検証すべく,従来法である開胸手術(OR)と胸腔鏡手術(TR)を比較したので報告する.
【方法】2001 年以降,当科にて経験したC 型食道閉鎖症中,2.0 kg 以下,重症心奇形,重症染色体異常を除き,ASD,VSD を合併した12 例を対象とし,TR 5 例,OR 7 例の2 群間において後方視的に比較検討した.
【結果】手術時間はTR:180 分(160~230),OR:159 分(120~186)と有意差を認めなかった.術中の合併症は両群とも認めなかった.TR とOR の術中ETCO2 と血液ガスを比較し,有意差はなかった.術後合併症は,縫合不全はTR:0%,OR:28%,吻合部狭窄はTR:20%,OR:28%,気管食道瘻再開通は両群とも認めず,術後胃食道逆流で噴門形成を要したのはTR:40%,OR:28%と全て有意差を認めなかった.
【結論】今回の比較検討では後方視的ではあるが,胸腔鏡の非劣性であった.稀少疾患であり,少ない症例数ではあるが,当研究においてASD やVSD のような肺血流増加性心疾患に対しての安全性は認められた.人工気胸や術中操作で肺血管抵抗が上昇する可能性が考えられるため,肺血流減少性疾患や複雑心奇形に対して当科では胸腔鏡手術は適応としていないが,今後さらなる検討が必要である.

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