日本小児外科学会雑誌
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51 巻, 5 号
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おしらせ
追悼文
原著
  • 今治 玲助, 大平 知世, 加藤 怜子, 橋本 晋太朗, 向井 亘, 佐伯 勇, 谷 守通, 秋山 卓士
    2015 年 51 巻 5 号 p. 864-867
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】本邦停留精巣診療ガイドラインでは,2 歳までに手術を行うべきとされている.しかし健診医,小児科医,泌尿器科医および一般社会に広く浸透しているかどうかは定かではない.我々は当科で精巣固定術を施行した症例の手術時期遅延理由および精巣萎縮について検討したので報告する.
    【方法】2008 年4 月から2014 年3 月までに,当科で精巣固定術を施行した症例において手術時年齢,手術遅延理由,精巣萎縮の有無について診療録を後方視的に検討した.超音波で対側より20%以上の容量萎縮を認めた場合,または触診上有意に左右差を認めた場合に萎縮傾向ありと判断した.
    【結果】期間中に手術を施行した停留精巣症例は109 例(右側48 例左側38 例,両側23 例,手術時年齢平均2 歳3 か月,中央値1 歳7 か月)であった.2 歳未満で手術を施行した76 例中15例に精巣萎縮を認め,2 歳以上で手術を施行した33 例中15 例に萎縮を認めた.2 歳以上で手術を施行した群に有意に精巣萎縮を多く認めた(p=0.01).
    【結論】停留精巣至適手術時期が健診医,小児科医,泌尿器科医に広く浸透しているとは必ずしも言えない.今後一般社会も含めて停留精巣という疾患,その手術時期についての周知が必要と考えられた.
  • 薄井 佳子, 小野 滋, 馬場 勝尚, 辻 由貴, 河原 仁守, 福田 篤久
    2015 年 51 巻 5 号 p. 868-872
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】13・18 トリソミーの治療方針は各施設に委ねられている.自施設では積極的な外科治療も行う方針としており,その妥当性について検討した.
    【方法】2008 年1 月から2014 年6 月に,当院NICU に入院した13・18 トリソミー21 例を対象として後方視的に解析した.
    【結果】全例が出生前に超音波検査で胎児異常を指摘され,染色体異常の出生前診断は9 例(42.9%)に行われた.出生後,11 例(52.4%)に小児外科疾患が診断され,内訳は腸回転異常(症)4 例,食道閉鎖症2 例,胃食道逆流症2 例,横隔膜ヘルニア1 例,肝芽腫1 例,低位鎖肛1 例,臍帯ヘルニア1 例,鼠径ヘルニア1 例であった.根治術を施行した腸回転異常症2 例と食道閉鎖症1 例は,在宅で2~5 年の長期生存中である.肝芽腫1 例は,積極的治療希望であったが,体重4 kg 台で心奇形合併があり治療困難と判断され緩和ケアに移行した.食道閉鎖症1 例,低位鎖肛1 例,臍帯ヘルニア1 例は,姑息的手術を選択した.長期に気管挿管された4 例には気管切開術を施行した.心奇形は20 例(95.2%)に合併し,3 例に心内修復術や肺動脈絞扼術が施行された.主に心疾患の重症度が予後を規定しており,新生児集中治療と心疾患に対する治療選択により経過が左右された.一方,小児外科医による外科治療は生命予後に直接関与することは少なく,予後不良症例に対する姑息的手術も患児と家族の時間を妨げるものではなかった.
    【結論】近年13・18 トリソミーの長期生存例が着目されるようになり,個々の病状に応じた治療が必要とされる.客観的な医学的評価に基づいた積極的な外科治療の提供は倫理的にも妥当である.
  • ―ASD,VSD合併症例に対する胸腔鏡手術と開胸手術の比較―
    矢本 真也, 福本 弘二, 納所 洋, 三宅 啓, 金城 昌克, 中島 秀明, 小山 真理子, 漆原 直人
    2015 年 51 巻 5 号 p. 873-878
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】C 型食道閉鎖症の術式選択として胸腔鏡手術の適応は拡大している.しかし,心疾患合併例についての胸腔鏡手術の適応に関してはcontroversial である.今回,比較的頻度の高い心房中隔欠損症(ASD),心室中隔欠損症(VSD)を合併したC 型食道閉鎖症に対しての胸腔鏡手術の有用性を検証すべく,従来法である開胸手術(OR)と胸腔鏡手術(TR)を比較したので報告する.
    【方法】2001 年以降,当科にて経験したC 型食道閉鎖症中,2.0 kg 以下,重症心奇形,重症染色体異常を除き,ASD,VSD を合併した12 例を対象とし,TR 5 例,OR 7 例の2 群間において後方視的に比較検討した.
    【結果】手術時間はTR:180 分(160~230),OR:159 分(120~186)と有意差を認めなかった.術中の合併症は両群とも認めなかった.TR とOR の術中ETCO2 と血液ガスを比較し,有意差はなかった.術後合併症は,縫合不全はTR:0%,OR:28%,吻合部狭窄はTR:20%,OR:28%,気管食道瘻再開通は両群とも認めず,術後胃食道逆流で噴門形成を要したのはTR:40%,OR:28%と全て有意差を認めなかった.
    【結論】今回の比較検討では後方視的ではあるが,胸腔鏡の非劣性であった.稀少疾患であり,少ない症例数ではあるが,当研究においてASD やVSD のような肺血流増加性心疾患に対しての安全性は認められた.人工気胸や術中操作で肺血管抵抗が上昇する可能性が考えられるため,肺血流減少性疾患や複雑心奇形に対して当科では胸腔鏡手術は適応としていないが,今後さらなる検討が必要である.
  • ―LPECは小児外鼠径ヘルニアの標準術式になり得るか?―
    渡邉 高士, 窪田 昭男, 三谷 泰之, 瀧藤 克也, 山上 裕機
    2015 年 51 巻 5 号 p. 879-883
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小児鼠径ヘルニアに対して行われている腹腔鏡下ヘルニア修復術(laparoscopic perctaneous extraperitoneal closure:以下LPEC)をPotts 法と比較し,LPEC 法が男児,女児ともに標準術式となり得るか検討する.
    【方法】2011 年から2014 年までにLPEC 法を施行した107 例(男児44 例,女児63 例)と2008 年から2010 年までにPotts 法を施行した71 例(男児38 例,女児33 例)を対象とした.これらの症例の手術時間,術後合併症,当日退院の完遂率を比較した.
    【結果】手術時間の中央値は,男児の片側でLPEC 法35 分,Potts 法28 分(p<0.05),両側でLPEC 法43 分,Potts 法58.5 分(p<0.05).女児の片側でLPEC 法27 分,Potts 法27 分,両側でLPEC 法36 分Potts 法42 分であった.LPEC 法施行時に対側の腹膜鞘状突起の開存を認めた症例は,男児で18 例(42.9%),女児で35 例(60.3%)であった.LPEC 法での術後対側発症例はなかったが,Potts 法での術後対側発生は6 例(8.5%)であった.手術同日の退院率はLPEC 法98.7%,Potts 法で94.4%であった.
    【結論】LPEC 法はPotts 法と同様に小児鼠径ヘルニアの術式として有用である.またLPEC 法は対側腹膜鞘状突起の開存の有無を評価するのに適しており,対側出現の予防に有効であると考えられ,男児,女児ともに小児鼠径ヘルニアの標準術式となりうると考えられる.
  • 三谷 泰之, 窪田 昭男, 瀧藤 克也, 渡邉 高士, 合田 太郎, 加藤 紘隆, 山上 裕機
    2015 年 51 巻 5 号 p. 884-888
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】生後早期の直接ビリルビンの上昇を伴う黄疸は胆道閉鎖症との鑑別が問題となる.臨床所見,血液生化学検査,尿検査,腹部超音波検査,肝胆道シンチグラフィー,十二指腸液検査などで総合的に診断されるが,これらの検査で胆道閉鎖症が否定できない場合は試験開腹による直接胆道造影が必要となる.これらの手技に関しては可能な限り低侵襲で行うことが望ましい.今回,我々は胆道閉鎖症が疑われた新生児期および乳児期早期の胆汁鬱滞性肝障害を呈した児に対する細径針を用いた穿刺胆道造影に関して,その方法と有用性を検討したので報告する.
    【方法】2011 年から2014 年までに胆道閉鎖症が疑われて当科を受診した6 例を対象とした.日齢は28~78(平均47.5)日で,男児3 例,女児3 例であった.体重は3.1~4.3(平均3.7)kg であった.細径針を用いた穿刺胆道造影は,全身麻酔下で行い,原則として腹腔鏡(1 例で開腹)で行った.同時に肝生検も行った.造影後は穿刺孔の修復は行わなかった.
    【結果】すべての症例で造影検査が可能であった.最終診断は,新生児肝炎が1 例,胆囊無形成兼新生児肝炎が1 例,胆道閉鎖症(III-b1-ν)が4 例であった.胆道閉鎖症が除外された2 例においては,術後に胆管狭窄や胆汁漏などの合併症は認めなかった.
    【結論】生後早期に胆道閉鎖が否定できず,直接胆道造影が必要となった場合,細径針を用いた直接胆道造影は簡便で有用な方法と考えられた.
  • 小西 健一郎, 古村 眞, 森田 香織, 魚谷 千都絵, 石丸 哲也, 川嶋 寛, 杉山 正彦, 岩中 督
    2015 年 51 巻 5 号 p. 889-894
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】重症心身障がい児(者)に対する腹腔鏡下噴門形成術後に重症感染を合併することが報告されている.安全に周術期管理を行うために,重症心身障がい児(者)における周術期感染症のリスクファクターを明らかにすることを本研究の目的とした.
    【方法】2006 年6 月~2011 年12 月までに当科で腹腔鏡下噴門形成術を施行した重症心身障がい児(者)53 例を対象とした.原疾患は重症新生児仮死・染色体異常・難治性てんかんなどであった.周術期感染症の有無とそのリスクファクター(術前の保菌状態,栄養状態,年齢,側彎の程度,気道処置の有無,手術時間)について後方視的に検討し,単変量解析・多変量解析を行った.
    【結果】周術期感染症は53 例中13 症例(24.5%)で経験された.内訳は,創部感染症4 例,肺炎2 例,尿路感染症2 例,腸炎1 例,カテーテル感染症1 例,末梢点滴刺入部の蜂窩織炎1 例,中耳炎1 例,感染源不明1 例であった.単変量解析では,弱毒菌の常在,乳幼児,身長体重比低値,気道処置されていないことが危険因子として示唆されたため,これらに対して多変量解析を行ったところ,弱毒菌の常在(p=0.02)と気道処置されていないこと(p=0.04)が,独立したリスクファクターであることを確認した.
    【結論】周術期感染症のリスクファクターは,弱毒菌の保菌と気管切開や喉頭気管分離の気道処置がなされていないことである.これらリスクファクターを有する患児の周術期管理には十分注意する必要がある.
症例報告
  • 松浦 玲, 田附 裕子, 合田 太郎, 曺 英樹, 石井 智浩, 山中 宏晃, 野村 元成, 出口 幸一, 米田 光宏
    2015 年 51 巻 5 号 p. 895-900
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は男児,日齢8 より呼吸状態が悪化し呼気吸気変換方式経鼻的持続陽圧呼吸法(nasal DPAP)での管理を必要とした.胸部X 線にて心陰影拡大,心臓超音波検査にて心房中隔欠損(ASD)および右心不全を認めた.造影CT にて下行大動脈から分岐する異常血管を認め,肺底動脈体動脈起始症(古典的Pryce I 型肺葉内肺分画症)と診断した.内科的治療を開始したが,異常血管による下行大動脈から肺静脈への左左シャントによる心負荷の増大,ASD の左右シャントによる右心不全,肺高血圧の進行などにより右心負荷は増大し,nasal DPAP も離脱できなかったため日齢43 に手術施行.異常血管を切離し,左肺下葉実質は気管支動脈からの栄養血管により血流良好であったため温存した.術後速やかに呼吸・循環が安定し,術後3 日目に呼吸サポートも終了しえた.術後7 か月現在経過良好である.
  • 向井 亘, 秋山 卓士, 今治 玲助, 佐伯 勇, 大平 知世, 上野 悠
    2015 年 51 巻 5 号 p. 901-904
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は6 歳男児.腹痛・全身倦怠感を主訴に近医を受診.患児はPeutz-Jeghers syndrome(以下PJS)の家族歴と特徴的な口唇色素沈着,Hb 4.6 g/dl と高度な貧血を指摘された.腹部造影CT 検査及び上部消化管内視鏡検査で胃体中~下部より十二指腸へ陥入する最大径50 mm 大の大きなポリープを認めた.治療目的に当科紹介となり,ball valve syndrome(以下BVS)と診断した.内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection,以下EMR)で巨大八つ頭状ポリープを一括切除し,切除後bipolar snare で分割し経食道的に摘出した.自験例の様な大きなポリープに対してもbipolar snare で分割する工夫を行うことで小児でも内視鏡的切除,回収可能である.繰り返しポリープが発生,多発するPJS に対して開腹術を回避できる手技として有用と考えられた.
  • 高橋 信博, 星野 健, 石濱 秀雄, 藤村 匠, 富田 紘史, 藤野 明浩, 篠田 昌宏, 北川 雄光, 黒田 達夫
    2015 年 51 巻 5 号 p. 905-909
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    17 歳男性.原因不明の肝硬変に対し生体部分肝移植術を行った(左葉グラフト,GRWR 1.05).術後早期より胆汁うっ滞,凝固異常,多量の胸腹水,汎血球減少を認め,連日輸血を必要とした.移植後7 日の肝生検で胆汁うっ滞と小葉中心性肝壊死を認めた.超音波検査にて肝動脈の流速低下,拍動係数上昇を認め,過小グラフト症候群に類似した病態を呈していると考え,移植後37日に近位脾動脈塞栓術を行ったところ肝動脈血流は著明に改善した.肝機能は徐々に改善し,移植後93 日に軽快退院となった.過小グラフト症候群はグラフトのサイズが機能的な需要に対し不十分な状態で,門脈過還流が本態とされる.リスクが高い場合には予防的に脾摘や脾動脈結紮による門脈血流調節が行われる.本症例ではグラフト重量は充分で発症を予測できなかったが,診断的治療として血管造影,近位脾動脈塞栓術を施行し,低侵襲に状態を改善させることが可能であった.
  • 中山 馨, 伊勢 一哉, 清水 裕史, 山下 方俊, 石井 証, 北條 洋, 後藤 満一
    2015 年 51 巻 5 号 p. 910-916
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症では,胆道穿孔による胆汁性腹膜炎をきたし発見される例がみられる.穿孔部位は,そのほとんどが総胆管であり,胆囊はまれである.今回我々は,胆囊の肝床側に穿通をきたした先天性胆道拡張症の1 例を経験したので報告する.症例は1 歳8 か月女児.発熱,嘔吐,腹部膨満で発症した.腹部CT 検査で腹水および胆囊壁の浮腫性肥厚を認め,急性胆囊炎による腹膜炎を疑い,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内に胆汁性腹水を認め,胆囊頸部の肝床側剥離面に穿孔部を認めた.術中胆道造影検査で,総胆管の紡錘状の拡張,膵・胆管合流異常および共通管内のprotein plug を認めた.先天性胆道拡張症に合併した胆囊穿孔と診断し,腹腔鏡下胆囊摘出術および腹腔ドレナージ術を行った.術後経過は良好で,術後3 か月に先天性胆道拡張症に対する待機的根治術を施行しえた.発症機序としては,protein plug による胆囊内圧の上昇が考えられた.
  • 河崎 正裕
    2015 年 51 巻 5 号 p. 917-920
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    ヒルシュスプルング病根治術後に川崎病を発症した7 か月男児例を報告する.患児は術後高熱が遷延し,術後5 日目までに川崎病の診断基準を満たしたためグロブリン製剤を静脈投与した.心臓超音波検査で冠動脈の拡張を認めず良好な転帰が得られた.周術期に遷延する原因不明の発熱をみた場合,小児においては川崎病も考慮すべきである.また川崎病の治療が遅れると心血管合併症のリスクが高まるため,診断・治療は遅滞なく行う必要がある.
  • ―画像診断に関する考察を中心に―
    田原 和典, 長谷川 真理子, 畑中 政博, 五十嵐 昭宏, 藤野 順子, 石丸 由紀, 池田 均
    2015 年 51 巻 5 号 p. 921-926
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    急性膵炎で発症し,最終的に胆囊穿刺による直接胆道造影で胆管非拡張型膵・胆管合流異常と診断した1 例を報告する.症例は10 歳,女児.主訴は上腹部痛,嘔吐で,血中膵酵素の上昇を認め急性膵炎と診断した.MRCP を行うと長く軽度拡張した共通管を認め膵・胆管合流異常が疑われた.DIC-CT,ERCP では確定診断にいたらなかったが胆囊穿刺による直接胆道造影を行い,合流部が乳頭部括約筋の上流にあり,造影剤が膵管内へ逆流することを確認して膵・胆管合流異常と診断した.また胆囊胆汁中の膵酵素は異常高値を示すことも確認された.共通管が比較的短い症例では膵・胆管合流異常の診断は決して容易でなく,外科治療の適応根拠となる確定診断には直接胆道造影を含めた複数の画像検査を行い,診断を得る必要がある.
  • 栄 由香里, 諸冨 嘉樹, 里見 美和
    2015 年 51 巻 5 号 p. 927-931
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は11 歳,男児.生後8 か月時にfailed Kasai で生体肝移植を行った.脾腫が持続し,血小板減少を認めた.5 歳より年1 回程度の下血があり低蛋白血症を伴ったが保存的に軽快していた.肝内門脈血流は良好で,硬化療法を要する静脈瘤がないことを確認している.10 歳より低蛋白血症を伴う下痢と汎血球減少,高アンモニア血症を呈するようになった.血小板数が3 万/μl 以下となり部分的脾動脈塞栓術を施行,その際の血管造影で門脈本幹の狭小化と左胃静脈への側副血行路が明らかになった.このため,小開腹で経腸間膜静脈的に狭小化した門脈本幹のバルーン拡張を行い,10 mm×4 cm のbare metal stent を留置し,左胃静脈側副血行路のコイル塞栓を行った.現在,ステント閉塞予防のためワーファリン0.5 mg/日を内服している.下痢は消失し活動性が向上した.血小板数は6 万/μl に増加,アンモニアは正常化した.
  • 鮫島 由友, 韮澤 融司, 浮山 越史, 渡邉 佳子, 望月 智弘, 佐藤順一朗
    2015 年 51 巻 5 号 p. 932-936
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)は大腸癌を高率に発症し,近年では予防的大腸全摘術により予後が改善している.一方,大腸外病変の発症が予後に関与するとされ,特に十二指腸乳頭部癌は重要な予後因子とされる.症例は19 歳男性.父はFAP で死亡.6 歳時に遺伝子検査でFAP と診断された.13 歳時に内視鏡検査で大腸と胃内の多発ポリープおよびVater 乳頭部のポリープを認めた.14 歳時に大腸全摘術を施行した.その後,急性膵炎にて緊急入院,Vater 乳頭部腫瘤の増大を認め,乳頭部切除術を施行した.病理学検査で腺癌を認めた.徐々に胆管口,膵管口周囲の腫瘤が増大したため,再発も考え,1 年10 か月後に膵頭十二指腸切除術を追加した.術後2 年の現在,再発を認めていない.FAP 患者でVater 乳頭部癌の若年発生は稀で,調べ得た限りでは本例は本邦で最年少症例であった.
  • 遠藤 耕介, 横井 暁子, 玉城 昭彦, 武本 淳吉, 森田 圭一, 岩出 珠幾, 大片 祐一, 福澤 宏明, 尾藤 祐子, 前田 貢作
    2015 年 51 巻 5 号 p. 937-941
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    キャッスルマン病はリンパ増殖性疾患で,小児例は稀である.限局型キャッスルマン病(以下,UCD)は完全切除で根治が得られる.上縦隔発生のUCD に対し,胸腔鏡下に切除し得た1 例を報告する.症例は7 歳男児,持続する不明熱およびCRP 高値にて紹介,胸部CT にて上縦隔に2×4 cm 大の腫瘤を認め,FDG-PET にて集積亢進(SUV max:3.586)を認めた.悪性リンパ腫またはUCD を疑い手術を施行した.手術は胸腔鏡下に行った.腫瘤は大小2 つのリンパ節からなり,一方のリンパ節を切除,術中迅速病理にて悪性リンパ腫は否定的であり残りのリンパ節も切除した.病理検査の結果hyaline vascular type のキャッスルマン病の診断に至った.術後経過は良好で,術後2 日目に退院,術後1 年現在再発を認めていない.UCD は稀であるが,縦隔腫瘤の鑑別診断として考え,本疾患が疑われた場合には完全切除を目指す必要がある.
委員会報告
研究会
あとがき
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