2016 年 52 巻 1 号 p. 120-123
A 型食道閉鎖症と前腸囊胞を合併した症例を経験した.症例は男児.妊娠24 週時の胎児超音波検査にて食道閉鎖症と右胸腔内囊胞を指摘され,36 週2 日1,762 g で出生後にA 型食道閉鎖症および右縦隔囊胞と診断された.出生後の呼吸障害は一過性であり,囊胞サイズや呼吸状態を注意深く監視しながら計20 回のブジーによる食道延長術を行ったのち,生後192 日目に囊胞切除と食道端々吻合を同時に施行した.切除した囊胞壁には線毛円柱上皮と扁平上皮を認め,最終的に前腸囊胞と診断された.A 型食道閉鎖症は一般的に食道盲端間の距離が長く根治術までに長期間を要するが,一方,前腸囊胞は後縦隔に好発し,圧迫による呼吸障害の原因となるため早期手術が望まれる.自験例では最終的に一期的に同時手術を行い得たが,待機するにあたっては急速な呼吸障害発生も想定した綿密な治療計画の策定が必要である.