日本小児外科学会雑誌
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原著
小児胃瘻造設患者の中長期予後についての検討
毛利 純子飯尾 賢治加藤 純爾新美 教弘田中 修一
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2016 年 52 巻 2 号 p. 233-238

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抄録

【目的】近年,嚥下障害のある小児に対し胃瘻造設術を施行することが多くなっている.その一方で,手術を躊躇する保護者も少なくない.その理由の一つとして胃瘻の周術期管理の問題点や長期的な予後についての情報が限られていることが考えられる.今回,我々は小児胃瘻造設患者の胃瘻造設時年齢,術後合併症,死亡率,経腸栄養離脱率,胃瘻継続使用率,胃瘻造設後噴門形成の有無,気管切開および喉頭気管分離手術施行数について検討した.
【方法】対象は2006 年1 月から2014 年2 月までに胃瘻造設術を施行した小児100 例であった.胃瘻造設希望者は全例が術前に24 時間下部食道pH モニタリングを施行された.その結果,逆流防止術の適応があり胃瘻造設に加え噴門形成術が施行されたものは対象から除外した.また,対象者全例が何らかの基礎疾患を有していた.手術は全身麻酔下に小開腹のStamm 法,もしくは腹腔鏡補助下内視鏡的胃瘻造設術で行われ,診療録を後方視的に検討した.
【結果】100 例のうち7 例が転医などにより追跡不能であった.術死例はなく,遠隔期死亡が8 例あったが,死因は胃瘻とは関連していなかった.生存例の術後観察期間は中央値62 か月であった.再手術を要した合併症は胃瘻再建術を行った1 例のみであった.また,術後経過中に高度な胃食道逆流のために噴門形成術を要した例は10 例であった.術後に経口摂取が確立し胃瘻が不要となり抜去に至った例は1 例のみであり,大部分の症例で造設された胃瘻は長期に渡って使用されていた.
【結論】今回の検討において,嚥下障害を有する小児患者に対して胃瘻造設術は安全に施行でき,離脱症例が少ないことが分かった.このため,胃瘻の選択は中長期的に妥当な栄養投与法といえると思われた.

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