日本小児外科学会雑誌
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52 巻, 2 号
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おしらせ
原著
  • 毛利 純子, 飯尾 賢治, 加藤 純爾, 新美 教弘, 田中 修一
    2016 年 52 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】近年,嚥下障害のある小児に対し胃瘻造設術を施行することが多くなっている.その一方で,手術を躊躇する保護者も少なくない.その理由の一つとして胃瘻の周術期管理の問題点や長期的な予後についての情報が限られていることが考えられる.今回,我々は小児胃瘻造設患者の胃瘻造設時年齢,術後合併症,死亡率,経腸栄養離脱率,胃瘻継続使用率,胃瘻造設後噴門形成の有無,気管切開および喉頭気管分離手術施行数について検討した.
    【方法】対象は2006 年1 月から2014 年2 月までに胃瘻造設術を施行した小児100 例であった.胃瘻造設希望者は全例が術前に24 時間下部食道pH モニタリングを施行された.その結果,逆流防止術の適応があり胃瘻造設に加え噴門形成術が施行されたものは対象から除外した.また,対象者全例が何らかの基礎疾患を有していた.手術は全身麻酔下に小開腹のStamm 法,もしくは腹腔鏡補助下内視鏡的胃瘻造設術で行われ,診療録を後方視的に検討した.
    【結果】100 例のうち7 例が転医などにより追跡不能であった.術死例はなく,遠隔期死亡が8 例あったが,死因は胃瘻とは関連していなかった.生存例の術後観察期間は中央値62 か月であった.再手術を要した合併症は胃瘻再建術を行った1 例のみであった.また,術後経過中に高度な胃食道逆流のために噴門形成術を要した例は10 例であった.術後に経口摂取が確立し胃瘻が不要となり抜去に至った例は1 例のみであり,大部分の症例で造設された胃瘻は長期に渡って使用されていた.
    【結論】今回の検討において,嚥下障害を有する小児患者に対して胃瘻造設術は安全に施行でき,離脱症例が少ないことが分かった.このため,胃瘻の選択は中長期的に妥当な栄養投与法といえると思われた.
  • 大場 豪, 山本 浩史
    2016 年 52 巻 2 号 p. 239-242
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】腸回転異常症に対する術式は,捻転解除後にLadd 手術を行うことが一般的であり,固定術の有用性は明らかではない.当院では固定術を付加することを原則として,正常の解剖学的走行となるように腸管を固定している.
    【方法】1.対象と方法 本術式を採用している2006 年9 月~2014 年12 月までの症例を対象とした.カルテ記載に基づき,手術時間,術後合併症,再捻転の有無について検討した.2.術式 捻転解除,傍十二指腸靭帯を切離し腸間膜根部の開排を行った後に,腸管全体を反時計回りに180 度回転させて上腸間膜動脈背側を十二指腸が通過する形態とする.上部空腸を後腹膜と固定し,小腸を左上腹部から右下腹部へと並べた後,上行結腸を右側腹部の後腹膜と固定する.
    【結果】対象となったのは17 例であった.手術時間は81±22 分であり,術後合併症は認めず,再発例も認めなかった.
    【結論】本来の解剖学的走行に戻すという観点から,固定方法として本術式を考慮してもよいと考える.
  • 畑田 智子, 高見澤 滋, 好沢 克, 岩出 珠幾, 吉澤 一貴, 五味 卓
    2016 年 52 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】嘔吐や誤嚥性肺炎,肺高血圧症,呼吸障害に対して胃食道逆流現象(gastroesophageal reflux:以下GER)の関与が認められることがある.ただし,生理的にもGER を認める乳児においては,逆流防止手術の適応や手術時期には苦慮することも多い.そこで当院ではGER を認める乳児に六君子湯の投与を積極的に行っている.当院での使用経験について検討を行った.
    【方法】2013 年1 月から2014 年6 月までに当科にGER を疑われて紹介になった乳児は25 人であった.臨床症状と上部消化管造影,酸逆流時間率よりGER の評価を行った.GER の診断で六君子湯による治療を行った17 人を対象とした.内服開始後の症状ならびに酸逆流時間率より効果判定を行った.
    【結果】六君子湯の内服開始量は平均で0.27 g/kg/day であった.六君子湯内服による有害事象は認められず,全例で内服継続可能であった.17 例中11 例(64.7%)に明らかなGER 症状の改善を認めた.平均内服期間は8 か月であった.
    【結論】六君子湯の内服を継続しながら成長を待つことで,外科的処置を回避することができると考えられた.
  • 田浦 康明, 大畠 雅之, 吉田 拓哉, 山根 裕介, 小坂 太一郎, 江口 晋, 稲村 幸雄, 徳永 隆幸, 永安 武
    2016 年 52 巻 2 号 p. 247-251
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】男児鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖(LPEC)法において,ラパヘルクロージャーTM の複数回の運針による精管・精巣動静脈の損傷の危険性を低減させることを目的とした,結紮糸のループ把持法の有用性について検討した.
    【方法】ループ把持法は,結紮糸の中央を折ってできるループそのものをラパヘルクロージャーTM で把持することにより,1 回の運針でヘルニア門に糸を二重に誘導する.2015 年5 月から2015年10 月まで,13 例の男児鼠径ヘルニアに対し,ループ把持法によるLPEC 法を施行した.
    【結果】手術時間の中央値は31.5 分で,従来のLPEC 法に比較して手術時間の延長は認めなかった.術中に結紮糸切断を1 例認めたが,2 本目で閉鎖可能であった.創部感染やヘルニア再発などの術後合併症は認めていない.
    【結論】ループ把持法は,ラパヘルクロージャーTM の複数回の運針による臓器損傷の危険性を低減できるうえ,手術時間の延長も回避できる,非常に有用な方法である.
  • ―第45回九州小児外科研究会アンケート調査の解析結果から―
    鈴東 昌也, 野口 啓幸, 中目 和彦, 向井 基, 加治 建, 家入 里志
    2016 年 52 巻 2 号 p. 252-258
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】食道閉鎖症,先天性食道狭窄症の両疾患に対する,九州・沖縄・山口地区における診療の現況を明らかにすることを目的とした.
    【方法】九州・沖縄・山口地区の小児外科診療施設に対し,過去10 年間に診断,治療された食道閉鎖症と先天性食道狭窄症を対象として,症例数とその概要,および診療方針についてアンケート調査を依頼した.
    【結果】29 施設中20 施設(69.0%)から回答を得た.食道閉鎖症190 例と先天性食道狭窄症39 例を集計した.食道閉鎖症において,各施設の経験症例数は,0 例が5 施設,1~5 例が1 施設,6~10 例が7 施設,15~20 例が5 施設,20~25 例が2 施設であった.出生前診断率は174 例中47 例(27.0%)であった.手術アプローチは側方切開を行っている施設が60.0%を占め,胸腔鏡手術を導入している施設は2 施設のみであった.手術施行症例の救命率は90.9%で,非手術症例を含む全体の救命率は73.7%であった.低出生体重児の比率は63.0%,極低出生体重児の比率は14.7%と高率であった.先天性食道狭窄症の分析では,病型は気管原基迷入型狭窄が12 例と最も多く,筋線維性肥厚性狭窄10 例,膜様狭窄3 例の順であった.合併奇形の比率は35.9%で,うち食道閉鎖症との合併を15.4%に認めた.発症時期は乳児期後半が56.8%と最も多かったが,新生児期発症も21.6%に認めた.
    【結論】食道閉鎖症の一期的手術症例については,全国集計と遜色ない結果であった.先天性食道狭窄症は,新生児期に嚥下障害で発症する症例もあるため,離乳食開始時期以外でも鑑別診断として念頭に置くべき疾患であると考えられた.
  • 佐伯 勇, 加藤 怜子, 向井 亘, 今治 玲助, 秋山 卓士
    2016 年 52 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】以前の報告において,乳児期に巨大臍ヘルニア(臍輪横径20 mm 以上)を有する4 症例に対し乳児期手術に臍形成術を施行し,全例で著明に臍輪の自然収縮を認め良好な形態となることを報告した.巨大臍ヘルニアに対して乳児期早期に手術を施行した群と,通常時期の手術群とで術前術後の臍輪横径サイズの変化を比較検討することを目的とした.【方法】乳児期早期に手術を施行した群10 例と,1 歳から2 歳の通常時期に巨大臍ヘルニアに対して手術を施行した群8 例の臍輪横径の比較検討を行った.【結果】通常時期の手術では,術前と術後1 か月の臍輪の平均横径の変化が26 mm→21.5 mm と収縮率(収縮率16.4%)が少ないのに比べ,乳児期早期の手術では臍輪の平均横径は26.7 mm→13.3 mm(収縮率49.9%)と著明に収縮していた(P<0.01).【結論】巨大臍ヘルニアに対する乳児期早期の根治術は,術後の臍輪の自然な収縮が期待できるため,1 歳を超えて手術をするよりも,明らかに美しい形態の臍を容易に形成することができる.同時手術を要する疾患を有する児においては,乳児期早期に積極的に臍形成術を同時施行すべきである.
症例報告
  • 栄 由香里, 諸冨 嘉樹, 久保 正二, 竹村 茂一, 里見 美和
    2016 年 52 巻 2 号 p. 264-269
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    移植肝グラフトに自己免疫性肝炎類似の障害が生じることが知られており,de novo 自己免疫性肝炎(de novo autoimmune hepatitis, de novo AIH),あるいは特発性移植後肝炎と称される.今回,生体肝移植7 年後に特発性移植後肝炎を発症し,ステロイド療法を行った症例を経験した.症例は葛西手術後の10 歳男児で,2 歳時に父親をドナーとして血液型不適合生体肝移植が行われた.タクロリムス内服で良好に経過していたが,10 歳時に肝酵素値が漸増した.IgG は高値で,自己抗体は陰性であった.肝組織像でinterface hepatitis を呈し,特発性移植後肝炎と診断した.ステロイドパルス療法で肝機能異常値は改善したが,治療6 か月後の肝生検で治療抵抗性の可能性が示唆され,再度ステロイドパルス療法を行った.現在タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチル,プレドニゾロン内服中であり,今後も早期発見早期治療のためにプロトコール肝生検を予定している.
  • 小林 めぐみ, 水野 大
    2016 年 52 巻 2 号 p. 270-274
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    幼児肝未分化胎児性肉腫に対し腫瘍全摘後,補助化学療法を施行し経過良好な症例について報告する.症例は3 歳の男児.発熱,嘔吐を主訴に来院し,右上腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.α-fetoprotein(AFP)は正常範囲内であった.入院後も腫瘤は増大傾向を認め,腫瘍全摘出術の方針で肝部分切除術を行った.病理組織学診断は肝未分化胎児性肉腫で,術後補助化学療法を施行した.術後の画像検査ではCT・MRI・PET-CT のいずれも異常所見は認めなかった.近年,肝未分化胎児性肉腫の報告は散見されるようになり,その治療ならびに予後は飛躍的に向上しているが,特異的腫瘍マーカーや画像所見がなく,術後の評価法や治療法は確立されているとは言えない.本症例においても特異的所見はなく再発や転移の評価に苦慮しながら現在フォローを続けている.
  • 坂本 浩一, 大畠 雅之, 花﨑 和弘
    2016 年 52 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は1 歳,男児.新生児期から胸骨切痕部の皮下腫瘤に気づかれていた.経過観察となっていたが1 歳8 か月時に感染による腫脹をきたし切開排膿処置を行った後,感染所見が軽快してから1 か月後に摘出術を行った.腫瘤は囊胞病変で胸骨柄上部に存在し瘻孔や骨との癒着は認めなかった.病理組織学的検査にて気管支原性囊胞と診断した.小児の気管支原性囊胞は通常は縦隔内に発生し,皮下に発生するケースは稀である.皮下気管支原性囊胞の多くは新生児・乳児期に胸骨上部に発生し,経過中に感染症状を呈することがあり,積極的な外科治療が望まれる.
  • 岡村 かおり, 竜田 恭介, 飯田 則利
    2016 年 52 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は5 歳,男児.激しい腹痛と嘔吐のため前医を受診し,イレウスの診断で当科に緊急搬送された.腹部CT で小腸の拡張と右下腹部に拡張した管腔構造を認め,メッケル憩室に伴うイレウスの診断で緊急手術を行った.Mesodiverticular band が憩室頂部から腸間膜に付着し形成されたループ内に陥入した回腸が絞扼され,また憩室が頸部で時計回りに270° 捻転していた.Mesodiverticular band による内ヘルニアが誘因となり,索状物を軸として憩室茎捻転を発症したと考えられた稀な1 例を経験したため報告する.
  • 矢部 清晃, 松岡 亜記, 武之内 史子, 幸地 克憲
    2016 年 52 巻 2 号 p. 286-290
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    Prepubertal unilateral fibrous hyperplasia of the labium majus(以下PUFH)は思春期前の女児に生じる片側性の大陰唇の腫大を特徴とする.症例は8 歳女児.初診1 年前より自覚症状のない左大陰唇の腫大を認めた.左大陰唇の腫大は軟らかく,境界は不明瞭であった.MRI では左大陰唇の皮下にT1 強調・T2 強調で低信号の境界不明瞭な領域を認めた.造影CT では造影効果に乏しかった.間葉系腫瘍の増生を疑い切除術を施行した.切除標本の病理組織学所見でPUFH と判明した.術後2 年が経過するが再発はない.PUFH は新しい疾患概念であり国内外での報告数が少ない稀な疾患であるが,思春期前の女児の外陰部の腫大では鑑別を考慮する必要がある.
報告
地方会
あとがき
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