日本小児外科学会雑誌
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原著
九州・沖縄・山口地区における先天性食道疾患の診療の現況
―第45回九州小児外科研究会アンケート調査の解析結果から―
鈴東 昌也野口 啓幸中目 和彦向井 基加治 建家入 里志
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2016 年 52 巻 2 号 p. 252-258

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抄録

【目的】食道閉鎖症,先天性食道狭窄症の両疾患に対する,九州・沖縄・山口地区における診療の現況を明らかにすることを目的とした.
【方法】九州・沖縄・山口地区の小児外科診療施設に対し,過去10 年間に診断,治療された食道閉鎖症と先天性食道狭窄症を対象として,症例数とその概要,および診療方針についてアンケート調査を依頼した.
【結果】29 施設中20 施設(69.0%)から回答を得た.食道閉鎖症190 例と先天性食道狭窄症39 例を集計した.食道閉鎖症において,各施設の経験症例数は,0 例が5 施設,1~5 例が1 施設,6~10 例が7 施設,15~20 例が5 施設,20~25 例が2 施設であった.出生前診断率は174 例中47 例(27.0%)であった.手術アプローチは側方切開を行っている施設が60.0%を占め,胸腔鏡手術を導入している施設は2 施設のみであった.手術施行症例の救命率は90.9%で,非手術症例を含む全体の救命率は73.7%であった.低出生体重児の比率は63.0%,極低出生体重児の比率は14.7%と高率であった.先天性食道狭窄症の分析では,病型は気管原基迷入型狭窄が12 例と最も多く,筋線維性肥厚性狭窄10 例,膜様狭窄3 例の順であった.合併奇形の比率は35.9%で,うち食道閉鎖症との合併を15.4%に認めた.発症時期は乳児期後半が56.8%と最も多かったが,新生児期発症も21.6%に認めた.
【結論】食道閉鎖症の一期的手術症例については,全国集計と遜色ない結果であった.先天性食道狭窄症は,新生児期に嚥下障害で発症する症例もあるため,離乳食開始時期以外でも鑑別診断として念頭に置くべき疾患であると考えられた.

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