気管カニューレ抜去後に瘻孔が自然閉鎖しない気管皮膚瘻は外科的に縫合閉鎖されることが多いが,縫合閉鎖により気管の狭窄をきたすことがあり,筋組織や皮膚などを被覆して閉鎖せざるをえない場合がある.今回我々は自然閉鎖しない気管皮膚瘻に対して,胸骨舌骨筋flap を用いて閉鎖した症例を経験したので報告する.症例は4 歳男児.Pierre Robin 症候群,後天性声門下腔狭窄のため気管切開術が施行され,その後声門下腔狭窄に対するレーザー治療が奏功し気管切開カニューレが抜去されたが,気管切開孔が自然閉鎖しなかったため,閉鎖術を行った.気管皮膚瘻を切除し,気管前壁の6×3 mm 大の瘻孔を単結節縫合したが,高度の気管狭窄による呼吸困難を認めたためラリンジアルマスクによる換気下に縫合糸を抜糸し,胸骨舌骨筋を気管壁に縫着し瘻孔を閉鎖した.本術式は手術操作が簡便で低侵襲であるため,気管を直接縫合閉鎖できない症例に有用な方法であると思われた.