日本小児外科学会雑誌
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52 巻, 4 号
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おしらせ
原著
  • 廣谷 太一, 安部 孝俊, 林 憲吾, 下竹 孝志
    2016 年 52 巻 4 号 p. 917-921
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】近年小児急性虫垂炎に対する治療法として,非穿孔例や腫瘤形成症例において保存的治療が試みられている.一方で,本疾患の診療過程におけるESBL(extended-spectrum betalactamase)産生大腸菌など難治性細菌や術後偽膜性腸炎の併発が問題となるなど,小児虫垂炎症例における虫垂内細菌叢は本疾患の診療計画に多くの影響が認められる.本報告では小児における虫垂内細菌叢の傾向と臨床所見との関連を明らかにすることを目的とした.
    【方法】2007 年1 月~2014 年12 月の間に急性虫垂炎に対して虫垂切除術を施行した302 例のうち,虫垂内容物の細菌培養検査を施行した275 例(男児149 例:女児126 例)を後方視的に検討した.虫垂を切除後,直ちに内容液を採取して細菌培養容器(好・嫌気性)に収め,穿孔例では膿性腹水を併せて採取し細菌培養検査に提出した.
    【結果】虫垂切除後細菌培養検査を施行した275 例中203 例(73.8%)においてE. coli が検出され,うち5 例(1.8%)がESBL 産生E. coli であった.続いて嫌気性菌群であるBacteroidesfragilis, thetaiotaomicron, vulgatus,他)155 例(56.4%),Streptococcus(α-hemo, γ-hemo, milleri,他)80 例(29.1%),Enterococcus sp. 48 例(17.5%),Pseudomonasaeruginosa,他)37 例(13.5%)などが検出された.また,回盲炎を高率に惹起するYersinia enterocolitica が1 例(0.4%)に検出された.
    【結論】虫垂内細菌叢は,小児期における急性虫垂炎の病態発生に必ずしも直接関与しない場合も多いと考えられるが,これらを的確に理解することはYersinia 菌感染など病因発生に直接関与する場合のほか,適切な抗菌剤の選定を通して術後感染の回避や耐性菌発生の防止,術後偽膜性腸炎に備えるなど,重篤な術後合併症の回避に重要な情報を与えるものと考えられた.
  • 今治 玲助, 高野 周一, 吉田 篤史, 片山 修一, 久保 裕之, 亀井 尚美, 岩村 喜信, 佐々木 潔, 村守 克己, 野田 卓男
    2016 年 52 巻 4 号 p. 922-926
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】中国四国地域の小児外科施設におけるapple-peel 型小腸閉鎖症の頻度,治療方針,入院期間,生存率,予後についてアンケート調査の結果を報告する.
    【方法】日本小児外科学会中国四国地方会所属施設に対しアンケート調査を行った.対象は1990 年1 月1 日~2013 年12 月31 日に出生し,手術所見でapple-peel 型小腸閉鎖症と診断された症例とした.
    【結果】13 施設より回答が得られた.小腸閉鎖症例総数は203 例であり,apple-peel 型小腸閉鎖は17 例(8.4%),男児6 例女児11 例であった.在胎週数平均35 週2 日,出生体重平均2,315 g であった.胎児診断は13 例(76.5%)で行われた.PN 施行期間は平均68.8 日(8~313 日)であり,入院期間は平均98.8 日(19~218 日)であった.1 期的手術は13 例(76.5%)で行われ,13 例中4 例(30.8%)に再手術が行われた.全例生存し,1 歳時体重は平均8.4 kg,3 歳時体重は平均12.6 kg であり長期的合併症は認めていない.
    【結論】本研究では全例長期的合併症なく生存しており,予後良好であった.全身状態良好ならば1 期的手術可能であるが,吻合に対する十分な注意が必要である.また敗血症,胆汁鬱滞,短腸症候群を念頭に置いた管理が重要であり,吻合部狭窄・縫合不全により術後肝障害・黄疸の危険性が高まると考えられた.
  • 薄井 佳子, 小野 滋, 馬場 勝尚, 辻 由貴, 河原 仁守, 前田 貢作
    2016 年 52 巻 4 号 p. 927-932
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小児気道異物の臨床像は多彩であり,異物吸引のエピソードが明らかでない場合や非典型例では初期診断が難しい.胸部単純X 線(以下CXR)のみによる画像診断は困難なため,CT 検査(以下CT)の有用性について検討した.
    【方法】過去7 年間に当科で診療した16 歳未満の気道異物(疑いを含む)の症例を対象として後方視的に解析した.
    【結果】12 症例が対象となり,発症時年齢は1 歳5 か月から10 歳4 か月(中央値3 歳5 か月)であった.10 例に対して硬性気管支鏡が行われ,7 例で気道異物(ピーナッツ5 例,小石1 例,円筒形・中空のプラスチックチューブ1 例)が確認されたが,2 例は異物吸引による誤嚥性肺炎,1 例は異常所見なしと診断した.非典型的な臨床経過の2 例は,CXR,CT および入院経過により気道異物なしと判断して気管支鏡を施行しなかった.術前の画像検査は,12 例全てにCXR,10 例にCT が施行されていた.2 例は来院直後に硬性気管支鏡を施行して診断したため,CT を施行しなかった.気管支鏡での異物摘出を要した7 例全てが,術前にCXR およびCT を施行されており,それぞれの画像検査所見を比較した.CXR では3 例に異常所見を認めたが異物を描出できたのは1 例のみで,2 例は過膨張や無気肺など間接的所見のみであった.一方CT では6 例に明瞭な異物描出および間接的な肺野情報を詳細に得られた.
    【結論】気道異物を疑う症例では迅速な気管支鏡による確定診断と異物の摘出が基本であるが,近年のCT は数秒の撮影時間で異物の大きさ,部位,間接的な肺野異常など詳細な情報を得られるため,小児気道異物の画像診断におけるCT の有用性は高い.
  • 藤井 喬之, 下野 隆一, 久保 裕之, 田中 彩
    2016 年 52 巻 4 号 p. 933-937
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】Pediatric Appendicitis Score(以下PAS)は小児急性虫垂炎の診断ツールとして有用とされているが,今回,PAS と病理学的進行度との間に関連性があるかを検討した.
    【方法】2012 年4 月から2015 年3 月までの3 年間で,当科にて急性虫垂炎と診断して手術を行い病理学的にも急性虫垂炎と診断された45 例について虫垂炎のPAS と病理学的進行度との間に相関がないかを検討した.
    【結果】平均年齢は9.2(4~14)歳で,男性25 例,女性20 例であった.PAS の平均は6.3±1.6 点であった.病理結果ではカタル性虫垂炎は1 例(2%),蜂窩織炎性虫垂炎が18 例(40%),壊疽性虫垂炎が19 例(42%),穿孔性虫垂炎が7 例(16%)であった.PAS は蜂窩織炎性虫垂炎と壊疽性虫垂炎では(5.2±1.5:6.9±1.4),蜂窩織炎性虫垂炎と穿孔性虫垂炎では(5.2±1.5:7.3±0.7),非穿孔性虫垂炎と穿孔性虫垂炎では(6.1±1.7:7.3±0.7)であり,それぞれ統計学的有意差を認めた.
    【結論】PAS と虫垂炎の病理学的進行度との間には一部ではあるが相関関係があることが示唆された.PAS 高値の場合は進行症例の可能性があり注意が必要である.
症例報告
  • 富樫 佑一, 坂井 宏平, 曽我美 朋子, 古川 泰三, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 木村 修, 田尻 達郎
    2016 年 52 巻 4 号 p. 938-942
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    日齢0 の男児.在胎26 週時,胎児MRI にて右先天性横隔膜ヘルニア(CDH)を指摘された.在胎38 週0 日で予定帝王切開にて出生.日齢4 で右横隔膜修復術を施行.右横隔膜全欠損にてパッチ修復術を施行した.術後1 日目より肝逸脱酵素の上昇を認め,腹部超音波検査にて肝臓左側の門脈血流の低下を認めたため,術後2 日目に緊急開腹術を施行.肝右葉は捻転して肝左葉の外側に移動しており遊走肝を呈していることが判明した.肝右葉の捻転を解除したところ,肝表面の色調は改善し,術中超音波検査でも門脈血流の改善を確認した.肝臓は右葉,左葉内側区域,左葉外側区域に分葉し,後腹膜面で癒合しているのみであった.右CDH は肝の分葉異常を念頭にいれ,術中注意して観察する必要があると考えられた.検索した限りにおいて,CDH 根治術後の肝捻転は,本症例が初めての報告例である.
  • 加藤 紘隆, 三谷 泰之, 窪田 昭男, 瀧藤 克也, 渡邉 高士, 合田 太郎, 山上 裕機
    2016 年 52 巻 4 号 p. 943-948
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は5 歳の女児で,陰毛の発育を主訴に近医を受診した.血液生化学検査にてテストステロンが1.25 ng/ml と上昇しており,超音波検査,CT およびMRI にて右副腎に6 cm 大の腫瘍を認めたため当科に紹介された.周囲組織への浸潤,腹腔内リンパ節転移および肝や肺などへの遠隔転移は認められなかった.以上より,アンドロゲン産生副腎皮質腫瘍と診断し,腹腔鏡手術の方針となった.手術所見では,右副腎原発の腫瘍を認め,下大静脈と接していたが明らかな浸潤は認めず,被膜を損傷することなく正常副腎とともに摘出した.腹腔鏡では,視野が良好で,下大静脈との剥離や血管処理が容易であった.腫瘍は径36×52×58 mm,重量75 g で通常の病理組織学的指標のみで良性,悪性の鑑別を行うことは困難であるためWieneke の評価項目を用いて副腎皮質腺腫と診断した.術後の血液生化学検査にてテストテロンは正常範囲に戻り,陰毛は消失した.術後補助療法は行わず,1 年7 か月が経過した現在,腫瘍の再発は認めていない.
  • 田中 夏美, 上野 豪久, 高間 勇一, 山中 宏晃, 田附 裕子, 奥山 宏臣
    2016 年 52 巻 4 号 p. 949-953
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は2 歳4 か月男児.突然の腹痛を主訴に当院に救急搬送された.腹部CT 検査にて多発巨大肝腫瘍と腹腔内出血を認め,腫瘍栓は両葉の肝内門脈を占拠し本幹まで進展していた.生検による病理学的診断および画像検査にて低分化型肝芽腫PRETEXT IV と診断した.CITA 療法を2 コース施行後にITEC 療法を1 コース施行したが門脈腫瘍栓は改善せず,切除不能肝芽腫と診断した.CDDP 療法を1 コース追加後に生体肝移植を施行した.手術所見では左右門脈枝に腫瘍が充満し本幹への浸潤も認められたが,術中迅速病理学検査で切除断端が陰性であることを確認し完全切除し得た.術後補助化学療法としてCPT-11 療法を4 コース施行し,術後5 年10 か月の現在再発なく生存中である.血管浸潤を伴う切除不能肝芽腫に対するプライマリー肝移植の予後は不良との報告があるが,腫瘍浸潤血管を合併切除して十分なサージカルマージンをとることで良好な結果を得られた.
  • 河原 仁守, 小野 滋, 柳澤 智彦, 馬場 勝尚, 薄井 佳子, 永薮 和也, 堀内 俊男
    2016 年 52 巻 4 号 p. 954-958
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は6 か月,男児.生後5 か月頃より喘鳴を認め,6 か月になると吸気性喘鳴と陥没呼吸が出現し,当院小児科を受診した.頸部レントゲン検査で頸部気管内腔に突出する陰影を認め,声門下腔狭窄症が疑われ当科紹介となった.硬性気管支鏡検査を予定したが,呼吸状態が悪化し,著しい努力様陥没呼吸,哺乳不良,啼泣時のSpO2 の低下を認めた.緊急硬性気管支鏡検査を施行すると,声門下腔に左後壁から発生し内腔を占拠する腫瘤性病変を認めた.気道確保を最優先し,緊急気管切開術を施行した.術後の造影CT 検査で壁にのみ造影効果を有する囊胞性病変を認め,声門下腔囊腫と診断した.2 週間後,硬性気管支鏡下に囊腫亜全摘術を施行した.病理組織検査では気道上皮からなる囊胞壁と診断された.1 か月後に再び硬性気管支鏡検査を行い,気道上皮が再生し,囊腫病変の再発のないことを確認し気管切開チューブを抜去した.術後,半年以上経過するが再発なく経過している.
  • 五味 卓, 高見澤 滋, 好沢 克, 畑田 智子, 岩出 珠幾, 吉澤 一貴
    2016 年 52 巻 4 号 p. 959-962
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    気管カニューレ抜去後に瘻孔が自然閉鎖しない気管皮膚瘻は外科的に縫合閉鎖されることが多いが,縫合閉鎖により気管の狭窄をきたすことがあり,筋組織や皮膚などを被覆して閉鎖せざるをえない場合がある.今回我々は自然閉鎖しない気管皮膚瘻に対して,胸骨舌骨筋flap を用いて閉鎖した症例を経験したので報告する.症例は4 歳男児.Pierre Robin 症候群,後天性声門下腔狭窄のため気管切開術が施行され,その後声門下腔狭窄に対するレーザー治療が奏功し気管切開カニューレが抜去されたが,気管切開孔が自然閉鎖しなかったため,閉鎖術を行った.気管皮膚瘻を切除し,気管前壁の6×3 mm 大の瘻孔を単結節縫合したが,高度の気管狭窄による呼吸困難を認めたためラリンジアルマスクによる換気下に縫合糸を抜糸し,胸骨舌骨筋を気管壁に縫着し瘻孔を閉鎖した.本術式は手術操作が簡便で低侵襲であるため,気管を直接縫合閉鎖できない症例に有用な方法であると思われた.
  • 山根 裕介, 吉田 拓哉, 田浦 康明, 小坂 太一郎, 大畠 雅之, 江口 晋, 永安 武
    2016 年 52 巻 4 号 p. 963-966
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    当科で施行した先天性十二指腸閉鎖症に対する腹腔鏡下ダイアモンド吻合術の経験から,腹腔鏡手術の手技を中心に報告する.症例は在胎38 週2 日,2,108 g で出生した1 生日の女児.出生後の腹部レントゲン単純写真でdouble bubble sign を認めたため,本症と診断され腹腔鏡下手術を選択した.術者は患者右側に,助手は患者左側に位置し,臍高よりやや頭側を底辺とする逆台形型の5 ポートで行った.まず小腸および横行結腸を患者左側に排除し,Kocherization の後,十二指腸水平部を同定した.水平部から下行部へ剥離を進めると,容易に十二指腸の閉鎖部が同定可能であった.口側十二指腸に横切開2 cm を,肛門側十二指腸に縦切開2 cm を置き,後壁は単結節縫合で,前壁は連続縫合でダイアモンド吻合を行った.当科の術式は視野展開を十分に行うことを重視しており,安全かつ確実な方法である可能性が示唆された.
  • 眞鍋 周太郎, 古田 繁行, 佐藤 英章, 北川 博昭
    2016 年 52 巻 4 号 p. 967-969
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は在胎35 週5 日に体重1,938 g で出生した1 絨毛膜2 羊膜性双胎の第2 子男児.母親は高齢出産のため妊娠初期に羊水検査を受けた.出生時,臍の左頭側に直径0.5 cm 大の腹壁欠損孔を認め,欠損孔から約2 cm 長の帯状組織塊が突出していた.出生後間もなく胎便排泄を認めた.脱出物の性状は不明であったが,非定型的腹壁破裂の診断で日齢2 に手術した.腹腔鏡を用いて脱出物が横行結腸から派生した大網の先端であり,腸管と非交通性であることを確認したのち,欠損孔中心に横切開で開腹した.欠損孔は左腹直筋内で腹壁全層を貫くように存在し,限局性の腹壁形成異常が考えられた.大網を部分切除したのち裂孔を含む腹壁開腹創を縫合閉鎖した.切除組織標本はfibrovascular connective tissue で,大網組織に矛盾しなかった.稀な限局性腹壁欠損の1 例を経験したので文献的考察を加え報告した.
  • 坂井 幸子, 久保田 良浩, 加藤 久尚, 森 毅, 清水 智治, 梅田 朋子, 谷 眞至
    2016 年 52 巻 4 号 p. 970-976
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は巨大臍帯ヘルニアの日齢0 の女児.在胎37 週5 日,体重2,612 g で出生.ヘルニア門は約6×6 cm で脱出臓器は肝臓と腸管であった.一期的閉鎖は不可能と判断し,ヘルニア囊にAquacel®Ag を貼付し,臍帯周囲の皮膚にAlexis® Wound Retractor S を縫着してサイロを形成した.日齢7 にサイロを除去し,Aquacel®Ag とTegadermTM でヘルニア囊を覆い1 週間ごとに交換した.臍帯は順調に上皮化して生後3 か月で完全に上皮化し,生後7 か月時に腹壁閉鎖術を施行した.ヘルニア門は約7×7 cm,脱出臓器は肝臓と腸管で腹腔内の癒着は認めなかった.Components separation technique にて筋膜を緊張なく縫合閉鎖でき,術後の呼吸・循環動態は安定していた.本法は全身状態に影響を与えずに臍帯を上皮化して待機的に腹壁閉鎖が可能であり,巨大臍帯ヘルニアに対して有用な治療法と考えられた.
  • 松浦 玲, 上原 秀一郎, 田附 裕子, 上野 豪久, 田中 夏美, 山中 宏晃, 高間 勇一, 奥山 宏臣
    2016 年 52 巻 4 号 p. 977-981
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    リンパ管奇形に対するOK-432 による硬化療法は保険収載され,有効例も多いため広く行われている.しかしその無効例に対する治療の選択には難渋する.我々はOK-432 抵抗性であったが,エタノール硬化療法が著効した頸部リンパ管奇形の2 例を経験したので報告する.症例1,15歳,女児.右頸部リンパ管奇形(mixed type)に対し計7 回のOK-432 局注を行うもリンパ管奇形は増大傾向であった.エタノール硬化療法を施行後2 週間は穿刺排液を要したが,以降は頸部の腫大なく経過している.症例2,20 歳,女性.15 歳時より右頸部リンパ管奇形(mixed type)に対しOK-432 による硬化療法,摘出術を施行されたが,リンパ管奇形は増大傾向であった.エタノール硬化療法を施行後,囊胞は縮小し再増大は認めない.OK-432 抵抗性のリンパ管奇形に対するセカンドラインの治療として,エタノール硬化療法は安全かつ有効である可能性が示唆された.
  • 近藤 玲美, 加藤 翔子, 金子 健一朗
    2016 年 52 巻 4 号 p. 982-986
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    先天性肝芽腫とは出生前ないし生後1 か月未満に診断された肝芽腫で,まれである.症例は在胎38 週で経膣分娩直後に肝腫瘍破裂で発症した.日齢9 のαフェトプロテイン(AFP)は264,109 ng/ml と正常域だが,L3 分画は29%と高値だった.肝血管腫と鑑別が困難で生検により肝芽腫と診断した.画像では下大静脈閉塞を伴う肝右葉の巨大腫瘍であった.日齢29 から4 クールの化学療法で下大静脈が開存し,肝右葉尾状葉切除で摘出が可能となった.術後AFP は正常域内で低下し,L3 分画は検出されなくなった.化学療法を2 クール追加して退院した.術後1 年4 か月現在,無病生存している.先天性肝芽腫は報告例でも新生児期前半はAFP 値が正常域にある.本例からL3 分画は診断と治療効果判定に有用と示唆された.先天性肝芽腫は予後不良と報告されたが,慎重な化学療法と手術の組み合わせで,通常の肝芽腫と同様に治療可能である.
  • 中原 康雄, 後藤 隆文, 高橋 雄介, 片山 修一, 大倉 隆宏, 福井 花央, 人見 浩介, 岩村 喜信, 青山 興司
    2016 年 52 巻 4 号 p. 987-991
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    小児の高度な後天性の声門および声門下腔狭窄症の治療は依然困難である.症例は2 歳4 か月の女児.抜管困難症のため気管切開を受けており,声門および声門下腔に高度な狭窄を生じていた.本症例に対し,我々はトリアムシノロンアセトニド水溶懸濁液(TA)を局所注射することで声門部の瘢痕治療を先行し,後に肋軟骨の前方および後方移植術を施行した.TA 局所注射単独を繰り返し施行することで完全閉塞であった声門部の瘢痕は改善し,声門下腔の内腔も観察できるようになった.1 回にTA 1 mg/kg 以下を3~4 週間ごとに用いたが,経過中明らかな副作用症状は認めなかった.喉頭気管形成術後2 か月でT チューブを抜去,術後1 年3 か月後に気管切開孔を閉鎖しえた.TA 局所注射は投与方法,投与量,投与間隔が定まっていないが非常に効果的であり,本疾患の治療の有用な選択肢の1 つであることが示唆された.
  • 升井 大介, 深堀 優, 浅桐 公男, 吉田 索, 橋詰 直樹, 七種 伸行, 石井 信二, 田中 芳明, 谷川 健, 八木 実
    2016 年 52 巻 4 号 p. 992-998
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    今回,乳児期に発症した特発性横行結腸穿孔の1 例を経験したので報告する.症例は8 か月男児.顔色不良,呻吟,嘔吐を契機に精査加療目的に当院紹介入院となった.増悪する腹部膨満のため腹部CT 施行すると横行結腸周囲にfree air と著明な腹水が認められたため,消化管穿孔の診断で緊急手術となった.横行結腸脾弯曲部に穿孔部が認められ,人工肛門造設術が施行された.術後DIC の併発と腹腔内膿瘍の遺残で治療に難渋した.特発性横行結腸穿孔の小児報告例は自験例を含め2 例のみであった.横行結腸穿孔は他部位より比較的予後良好とされるが,乳児症例である場合,症状の訴えが乏しく診断が遅れ,未発達な大網が穿孔部を被覆できずに重症化する可能性があり注意が必要である.排便異常の既往のある小児症例で消化管穿孔が疑われた場合は,本症も鑑別疾患に加えた迅速なCT の冠状断も活用した確定診断が重要であると考えられた.
地方会
研究会
あとがき
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