2016 年 52 巻 6 号 p. 1186-1191
本邦において,結腸間膜原発の神経鞘腫は成人例も含め報告数が極めて少ない.今回,小児例は本邦初と思われる症例を報告する.症例は11 歳,男児.腹痛を主訴に近医を受診.左上腹部に腫瘤を触知し,超音波検査で同部位に一致して多房性腫瘤を認め,悪性腫瘍が疑われて当科入院.各種腫瘍マーカーを含めた血液・尿検査では異常所見は認めなかった.造影CT 検査で長径10 cm 大で内部不均一な造影効果を有する腫瘤を認め,腫瘤内を左結腸動脈分枝後の下腸間膜動脈が貫通していた.画像検査上,悪性腫瘍が強く疑われ開腹摘出術を施行した.被包された腫瘍はS 状結腸間膜に存在し,腫瘍中心部を左結腸動脈分枝後の下腸間膜動脈が貫通していた.摘出した腫瘍の病理組織学検査で良性神経鞘腫と診断した.小児の腹腔内腫瘍として,神経鞘腫は術前診断することは困難であり,最終的には診断と治療を兼ねた外科的切除後の病理組織学検査により確定診断がなされる.