日本小児外科学会雑誌
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52 巻, 6 号
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おしらせ
プログラム
原著
  • 高橋 良彰, 伊崎 智子, 飯田 則利
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1157-1162
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】小児卵巣腫瘍の茎捻転症例と非茎捻転症例の臨床的特徴について検討する.

    【方法】1992 年4 月より2013 年3 月までの21 年間に当科で経験した小児卵巣腫瘍30 例について後方視的に検討した.

    【結果】30 例の年齢は9.3±3.6 歳であり,患側は右側17 例(57%),左側12 例(40%),両側1 例(3%)と右側がやや優位であった.術式は,腫瘍核出術が22 例(73%),付属器切除術が7 例(23%),腫瘍核出術+付属器切除術(両側例)が1 例であった.組織型では良性腫瘍が25例(83%)と大部分を占め,境界悪性腫瘍が3 例(10%),悪性腫瘍が1 例,良性腫瘍+悪性腫瘍(両側例)が1 例であった.再発はgliomatosis peritonei を伴う未熟奇形腫の1 例のみで,死亡例はなかった.茎捻転を15 例(50%)に認めた.茎捻転症例の腫瘍径は8.1±2.6 cm で,非茎捻転例の11.5±5.3 cm と比較し有意に小さかった.また茎捻転症例の入院時白血球数は10,077±3,720/μl であり,非茎捻転症例の6,798±2,316/μl と比較して有意に高値であった.茎捻転症例においては,15 例中12 例(80%)が発症から手術までに24 時間以上要しており,そのうち他の消化器疾患との鑑別が困難なため診断が遅れた症例が6 例と半数を占めた.

    【結論】茎捻転は50%と多く認めたが,腹痛の程度は様々で医療機関の受診が遅れること,非特異的症状を呈し診断が遅れることなどの理由で手術までに時間を要した症例が多かった.小児の下腹部痛の際は卵巣腫瘍茎捻転を常に念頭に置く必要がある.

  • 山田 耕嗣, 義岡 孝子, 大西 峻, 山田 和歌, 川野 孝文, 中目 和彦, 向井 基, 加治 建, 家入 里志
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1163-1168
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】気管支原性囊胞の自験例を集計し,今後の診断治療の参考とすべく,発生部位別にその臨床像,病理像を明らかとする.

    【方法】1989 年1 月より2015 年12 月までに当科で経験した気管支原性囊胞13 例を対象とし診療録を用いて後方視的に臨床所見と病理所見を詳細に検討した.

    【結果】年齢は0~12 歳(中央値9 歳)で性別は女児4 例男児9 例であった.発生部位は縦隔7 例,胸腔内4 例,頸部2 例で,初発症状は頸部腫瘤が2 例,発熱が1 例,胸背部痛が3 例,無症状が7 例であった.気管支原性囊胞に特徴的な病理所見である気管支腺や気管軟骨を11 例に認めたが,2 例では腫瘤壁の炎症が強く認めなかった.

    【結論】10 歳以上の年長児にみられた症候性の縦隔症例は腫瘤サイズの増大とともに症状も増悪し,腫瘤サイズ増大とともに気管・食道との癒着が高度となり,その結果手術難度を上昇させることが示唆された.肺内症例は固有の胸膜を有し正常肺実質と交通がない肺葉外発生型と,正常肺実質と接し肺胞や気道レベルでの交通を有し,感染を合併する肺葉内発生型の2 種類に分類されると考えられた.頸部症例は術前診断が困難であり,気管と離れた部位に腫瘤が発生していた.

症例報告
  • 山本 美紀, 諸冨 嘉樹, 久保 正二, 竹村 茂一
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1169-1171
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は2 か月,男児,4.3 kg.胆道閉鎖I cyst に囊胞空腸吻合を実施したが減黄不良のため葛西手術を行った.肝梗塞となり,3 日後に緊急生体肝移植を施行した.S2(170 g)のhyper reduced graft を使用,graft-to-recipient weight ratio は3.95%であった.閉創が困難なためシリコンパッチを使用した.移植後,数回の閉腹術を試みたが困難であった.1 か月後の閉腹術の際に腹壁とグラフトの癒着を剥離したため,グラフト肝のねじれによりoutflow block をきたした.グラフトの位置が安定せず14Fr-Foley カテーテルをグラフトの右側に挿入した.これにより肝の位置が安定してoutflow block を防止できた.カテーテルは15 日後に抜去した.小児肝移植後のグラフト位置異常によるoutflow block の予防に尿道バルーンカテーテルの使用が有効であった.

  • 笈田 諭, 齋藤 武, 照井 慶太, 光永 哲也, 中田 光政, 大野 幸恵, 三瀬 直子, 吉田 英生
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1172-1179
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は6 歳女児.嘔吐,腹痛にて発症し,第2 病日に急性腹症の診断で当科へ救急搬送された.腹部超音波,造影CT にて右卵巣捻転と診断し緊急手術を施行した.腹腔鏡で観察すると右卵巣は反時計回りに720 度捻転していた.外観に腫瘍を疑わせる所見なく,捻転解除のみで終了した.なお左卵巣は正常で,腫瘍マーカーや内分泌学的検査でも異常所見を認めなかった.術直後の経過は良好だったが,術後11 か月で再発し再度緊急手術を施行した.右卵巣は反時計回りに360 度捻転しており,腹腔鏡下に捻転を解除し,卵巣固有靭帯を縫縮して両側の卵巣を固定した.術後1 年再発なく経過している.正常卵巣捻転は稀な疾患で,報告例は初経前の小児に多い.症状が非特異的であり,診断に至るまでの期間が長い症例も多い.卵巣固定の是非についてコンセンサスはないが,卵巣固有靭帯の縫縮による卵巣固定を行った症例の再発報告はなく有用な方法と考えられる.

  • 三藤 賢志, 高間 勇一, 米田 光宏, 大野 耕一, 中岡 達雄, 東尾 篤史, 中村 哲郎
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1180-1185
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    患児は11 歳,女児.友人に腹部を殴打され腹痛が出現.受傷3 日目に前医受診し,外傷性膵損傷が疑われ当院救急受診となった.全身状態は安定しており,血液検査にて炎症所見,アミラーゼ上昇も軽度であった.超音波検査で膵体部背側に69×52 mm の充実成分と液性成分が混在する腫瘤を認め保存的加療を開始した.造影MRI 検査で膵充実性偽乳頭状腫瘍(solid pseudopapillary tumor,以下SPT)と術前診断し手術施行した.受傷14 日目に脾合併膵体尾部切除術を施行.腫瘍破裂は認めなかったが脾動静脈は腫瘍に巻き込まれており,正常膵との境界も不明瞭で核出術は不可能であった.病理組織検査にてSPT と確定診断した.術後経過は良好で,現在術後24か月で再発徴候はない.腹部外傷後の膵腫瘤ではSPT を考慮する必要がある.SPT の摘出の際には様々な術式を考慮する必要があるため十分な術前検査を行い手術すべきだと考える.

  • 城之前 翼, 大滝 雅博, 二瓶 幸栄, 鈴木 聡, 三科 武
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1186-1191
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    本邦において,結腸間膜原発の神経鞘腫は成人例も含め報告数が極めて少ない.今回,小児例は本邦初と思われる症例を報告する.症例は11 歳,男児.腹痛を主訴に近医を受診.左上腹部に腫瘤を触知し,超音波検査で同部位に一致して多房性腫瘤を認め,悪性腫瘍が疑われて当科入院.各種腫瘍マーカーを含めた血液・尿検査では異常所見は認めなかった.造影CT 検査で長径10 cm 大で内部不均一な造影効果を有する腫瘤を認め,腫瘤内を左結腸動脈分枝後の下腸間膜動脈が貫通していた.画像検査上,悪性腫瘍が強く疑われ開腹摘出術を施行した.被包された腫瘍はS 状結腸間膜に存在し,腫瘍中心部を左結腸動脈分枝後の下腸間膜動脈が貫通していた.摘出した腫瘍の病理組織学検査で良性神経鞘腫と診断した.小児の腹腔内腫瘍として,神経鞘腫は術前診断することは困難であり,最終的には診断と治療を兼ねた外科的切除後の病理組織学検査により確定診断がなされる.

  • 佐藤 かおり, 杉山 正彦, 新井 真理, 石丸 哲也, 魚谷 千都絵, 加藤 怜子, 岩中 督, 藤代 準
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1192-1196
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    日齢0 の男児.胎児期に腹部腫瘤を指摘され,出生後の検査で右腎上極に径7 cm の腎臓との境界が不明瞭な造影効果の低い充実性腫瘤を認めた.年齢や画像所見より先天性間葉芽腎腫(CMN)を疑い,日齢8 に右腎合併腫瘍摘出術を施行した.肉眼的に完全切除と考えられたが,病理組織学的にはCMN,cellular type で腎静脈壁への浸潤を認め断端陽性でありstage 3 と診断した.術後化学療法は施行せず,術後1 年9 か月現在再発は認めていない.CMN の多くは腎臓に限局し腎摘のみで予後は良好であるが,腫瘍破綻や断端陽性によるstage 3 の症例は局所再発の危険因子とされている.しかし,本症例のようにCMN のstage 3 でも胎児期や新生児期の発症例では化学療法を回避できる可能性があり,今回の症例でもその可能性が示唆された.

  • 鈴木 久美子, 林 宏昭, 佐藤 正人
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1197-1201
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は10 歳女児.間欠的腹痛と嘔吐を主訴に前医を受診した.器質的疾患を先進部とする小腸-小腸型腸重積症疑いで,当院を紹介入院,腹腔鏡下に緊急手術を施行した.手術は単孔式で開始した.回盲部より口側320 cm の空腸に小腸-小腸型腸重積を認め,腹腔鏡下に整復した.重積先進部に粘膜下腫瘍を確認したため,創外で小腸部分切除を施行した.切除標本で小腸myoepithelial hamartoma の診断を得た.Myoepithelial hamartoma は小児では稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 内田 豪気, 芦塚 修一, 金森 大輔, 平松 友雅, 吉澤 穣治, 大木 隆生
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1202-1207
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は3 歳男児.4 か月前頃より嘔吐を繰り返すため近医を受診した.腹部単純レントゲン写真で胃拡張を認め,内服薬で経過観察するも改善なく,4 か月間で約3 kg の体重減少も認めたため,精査目的に紹介となった.腹部超音波検査では幽門輪から十二指腸の筋層の肥厚を認めた.上部消化管造影検査では著明な胃の拡張および幽門部の通過障害の所見であった.上部消化管内視鏡検査では幽門輪に一致して狭窄所見を認めたが粘膜の異常は認めなかった.以上から原因不明の幽門狭窄症の診断で手術を施行した.術中所見では胃幽門部から十二指腸にかけて全周性肥厚を認めた.可及的に肥厚部前壁を3/4 周性に切除しHeinecke-Mikulicz 法にて再建した.病理診断は異所性膵であった.術後経過は良好であり,通常の食事摂取が可能となり体重増加も良好である.小児において有症状の異所性膵の報告は少なく,また本症例では残存膵組織が存在するため今後も慎重な経過観察が必要である.

  • 堀池 正樹, 大野 耕一
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1208-1213
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は4 歳9 か月,男児.生後10 か月から計11 回目の腸重積を発症し非観血的に整復した.整復後の超音波検査では回腸末端に多数の隆起性病変が疑われ,下部消化管内視鏡検査では同部に多発結節状腫瘤を認めた.病理検査からリンパ濾胞性ポリポーシス(本症)と診断し本症が繰り返す腸重積症の原因と判断した.ステロイド治療を施行し内視鏡にて効果判定を行ったところ,ポリポーシスの消退は認めなかった.本邦では本症による腸重積症が19 例報告されていた.平均発症年齢は4 歳と高く,重積回数は平均2.8 回であり,非観血的整復率は平均26.3%と低かった.小児腸重積症の原因精査において超音波検査は有用であり,治療効果判定も可能である.本症に対してステロイドの有効性が報告されているが自験例では効果はみられなかった.ステロイド治療に関しては症例を重ねてさらなる検討が必要である.

  • 大場 豪, 山本 浩史
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1214-1217
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は3 か月男児.胆汁性嘔吐を主訴に前医受診,腹部単純X 線写真で大腸ガスの右方偏位を指摘され,腸回転異常症の疑いで当院紹介となった.CT,注腸造影にて非定型腸回転異常症が疑われたが,病態がはっきりせず試験開腹術を施行した.上腹部3.5 cm で開腹したところ,左側結腸が固定されておらず脾彎曲部は形成されていなかった.また,上行結腸間膜と下行結腸間膜が癒着し,左結腸が右側に倒れ,これによりTreitz 靭帯から出た空腸が右方に折れて屈曲し通過障害を呈している状態であった.Treitz 靭帯は形成されていた.結腸間膜の癒着を剥離し,下行結腸を左後腹膜に3 点固定した.術後経過良好で術後5 日目に退院となった.下行結腸が固定されていない病態は稀であると考えられ,報告する.

  • 松久保 眞, 野口 啓幸, 中目 和彦, 家入 里志
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1218-1222
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は1 歳7 か月女児.夕食後,木製の箸を手に把持した状態で転倒した際に,箸先端が左頬部に刺さった.母親が可及的に刺さった箸を抜去した後に当院救急センターを受診した.箸の先端は約1.5 cm 破損し,その所在は不明であったが,単純X 線検査と超音波検査では異物の残存は同定できず経過観察となった.しかし2 日後に発熱,食欲不振が出現したため再診した際に,CT 検査を施行したところ左顎関節周囲に高吸収域を認め,異物の残存が疑われた.3 次元再構築したCT 画像(以下3D-CT)により左顎関節内に残存する木片異物の正確な位置と形状を特定し,全身麻酔下の手術で木片を除去することができた.術後に軽度の顔面神経麻痺を認めたが軽快し,術後7 日目に退院となった.木片異物はX 線透過性が高いため単純X 線検査では見逃される可能性がある.異物の残存が否定できない場合はCT 検査まで行い,3 次元構成により確認することが必要であると考えられた.

  • 藤井 喬之, 下野 隆一, 久保 裕之, 田中 彩, 形見 祐人
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1223-1229
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    肺膿瘍を合併した縦隔奇形腫の2 例を経験した.症例1 は10 歳,女児.CT で前縦隔に長径30 mm の腫瘤および右肺膿瘍を認め,縦隔奇形腫の穿破に伴う右肺膿瘍と診断し,抗菌薬で炎症を鎮静化した後に手術を行った.胸骨正中切開で腫瘍摘出術および右肺部分切除術を施行した.症例2 は13 歳男児.発熱,咳嗽が続き精査のため当院へ紹介受診となった.CT で前縦隔に長径70 mm の多房性腫瘤を認め,また左肺膿瘍を形成しており縦隔奇形腫の穿破による左肺膿瘍と診断した.抗菌薬で膿瘍の縮小が得られた後に手術を行った.胸骨正中切開で開始したが胸腔側は癒着が強固であり前方腋窩切開を併用して腫瘍摘出術,左肺舌区切除術を行った.2 例とも抗菌薬治療を先行して炎症を鎮静化してから手術を行い,症例2 では肺膿瘍の縮小が得られたことで,左肺上葉切除を避けることが可能となった.患者の全身状態が許せば手術に先行して抗菌薬治療を行うことは有用であると考えられた.

  • 森 大樹, 石橋 広樹, 矢田 圭吾, 島田 光生
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1230-1235
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    今回,我々は著明な肝外胆管拡張を伴った小児先天性胆道拡張症の分流手術時に膵管損傷を来した症例を経験したので,その対策も含めて報告する.症例は生後6 か月の女児.生後5 か月時に12 cm 大の総胆管囊胞増大および閉塞性黄疸を認めたため胆囊瘻を造設し,生後6 か月時に分流手術を施行した.術中所見では5 cm 大の肝外胆管拡張を認め,術中胆道造影では胆管合流型の膵・胆管合流異常(新古味分類Ia 型)を認めた.総胆管囊胞下端は膵実質に埋没し合流部より尾側の膵管と接し,癒着していたため膵内胆管剝離の際に一部膵管損傷を認めた.3Fr. アトム栄養カテーテルT(アトムメディカル®)を用いて経皮・胃十二指腸膵管ステントを留置後,縫合修復した膵管損傷部位に大網充填し,膵被膜縫合し,肝管空腸吻合を行い,分流手術を完了した.術後経過は良好で膵液瘻はなく,術後膵管造影でも狭窄なく術後20 日目に退院した.

  • 平田 雄大, 井原 欣幸, 岡田 憲樹, 眞田 幸弘, 水田 耕一
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1236-1240
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    肺転移に代表される肝外病変を認める切除不能型肝芽腫に対する移植の適応や時期は,未だ確立していない.肺転移を認めた切除不能型肝芽腫に対する生体肝移植の2 例を経験したので報告する.症例1 は4 歳時に肺腫瘤影を指摘され,肝芽腫(PRETEXT IV,肺転移あり)と診断された.肺病変切除と化学療法後,5 歳時に生体肝移植を施行した.症例2 は発熱,腹部膨満,肝脾腫を指摘され,肝芽腫(PRETEXT IV,肺転移あり)と診断された.化学療法後に右肺病変を切除し,化学療法再開後に左肺病変も消失し,2 歳時に生体肝移植を施行した.2 症例で術後AFP は正常化を認めた.症例1 は術後2 年間再発所見なく外来通院中である.症例2 は術後経過良好であったが,術後17 日目に突然死した.診断時に肺転移を認める症例でも外科的切除と化学療法により腫瘍のviability をコントロールできれば肝移植で救命できる可能性はあると考えられた.

  • 門久 政司, 岡本 晋弥, 嵯峨 謙一, 佐野 薫
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1241-1245
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は7 歳女児.小学校入学頃より乳房発育を認めていた.その約半年後より不正性器出血が出現した.腹部超音波検査上,骨盤腔から臍上までを占める腫瘤を認めた.血液検査上,エストラジオール61.6 pg/ml と高値であり,MRI にて,腹腔内を占拠するT1WI で低信号,T2WI で高信号の充実部と歪な囊胞部が混在した14×10×7 cm 大の腫瘤性病変を認めた.術前診断としては,顆粒膜細胞腫もしくは未分化胚細胞腫として,右付属器切除術を施行した.術中所見は,対側付属器は正常所見であり,明らかな播種結節はなく腹水細胞診も陰性であり,FIGO 分類Stage Ia と診断した.病理結果は若年性顆粒膜細胞腫であった.追加の化学療法は不要と考え,現在外来で経過観察中である.若年性顆粒膜細胞腫は稀な疾患であり,今回は思春期早発症を契機に発見された.若干の文献的考察を加え報告する.

  • 柳澤 智彦, 小野 滋, 馬場 勝尚, 薄井 佳子, 河原 仁守, 永薮 和也
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1246-1250
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    梨状窩瘻の術後再発は15~25%と高率である.再発後の治療は再手術であるが,膿瘍形成後の瘢痕組織内にある瘻孔の同定は困難である.我々は,術中に内視鏡,透視,造影を併用することで,瘻孔の同定,および結紮処理が的確に施行可能であった梨状窩瘻再発の1 例を経験したので報告する.症例は3 歳時に左梨状窩瘻根治術を施行された5 歳の男児で,左頸部腫脹を主訴に当院を受診した.食道造影で左梨状窩に瘻孔を認め,左梨状窩瘻再発と診断した.手術時,内視鏡,透視下に瘻孔入口部から挿入したガイドワイヤーを術野から直接把持することで瘻孔を同定し,ガイドワイヤー周囲組織を剥離することで瘻孔の剥離を的確に行い,内視鏡下に梨状窩の瘻孔入口部で瘻孔処理が可能であった.術中内視鏡,透視,造影の併用により肉眼的に同定困難な瘢痕組織内の瘻孔の同定,処理が可能であり,再発のみならず初回手術においても有用と考えられた.

  • 牧田 智, 内田 広夫
    2016 年 52 巻 6 号 p. 1251-1255
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー

    小児におけるfibrolamellar hepatocellular carcinoma(以下,FLHCC と略す)の本邦報告例は6 例しかなく,まれな疾患である.今回我々はFLHCC に対して手術と化学療法を施行し良好な経過が得られたので報告する.症例は12 歳女児で,肝腫瘍を指摘され当院紹介となった.各種画像検査からリンパ節転移を伴うFLHCC が疑われ,開腹生検によりFLHCC と確定診断した.多発リンパ節転移があるためGemcitabine/Oxaliplatin 療法(GEMOX 療法)を1 コース先行した.PIVKA-II は低下したが腫瘍の大きさは変化しなかったため,手術の方針とした.肝左葉切除術+リンパ節郭清を施行した.術後補助化学療法としてGEMOX 療法を施行した.2 コース施行時点で癒着性イレウスを発症し,癒着剥離術を施行した.その後GEMOX 療法を10 コース施行して治療を完了した.術後3 年経過したが再発は認めていない.

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