日本小児外科学会雑誌
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症例報告
胆道閉鎖症の術後39年目に発生した肝細胞癌と肝内胆管癌の同時性重複癌の1例
荒井 勇樹窪田 正幸小林 隆大山 俊之横田 直樹
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2016 年 52 巻 7 号 p. 1303-1308

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抄録

葛西手術後の長期生存例は,肝癌発生例が問題となる.今回我々は,術後肝細胞癌と肝内胆管癌の同時性重複癌の症例を経験したので報告する.症例は39 歳男性.85 生日に胆道閉鎖症(I-b2-γ型)に対し,有茎空腸間置肝門部十二指腸吻合術が施行された.10 歳で食道静脈瘤が出現し,17 歳から増悪した.27 歳頃より胆管炎が生じ,35 歳頃から腹水が貯留する肝硬変となった.39 歳時に腫瘍マーカーの上昇を認め,画像検査所見から肝S1 に発生した肝細胞癌と肝内胆管癌の同時性重複癌と診断された.cT3cN0cM0 Stage III,肝障害度C と診断され,肝動脈化学塞栓療法を施行された.治療により肝細胞癌領域の完全壊死が得られたが,肝内胆管癌領域の縮小は認められなかった.Gemcitabine を用いた全身化学療法を追加したが,腫瘍マーカーの再上昇と腫瘍増大による肝不全の進行を認め,治療後8 か月で死亡した.文献的症例集積を行ったが,重複癌の発生は本例のみであり,また最年長症例であった.胆管癌発生例は全例死亡しており,予後不良であった.胆道閉鎖症に対する葛西術後の長期生存例において,肝癌発生を念頭に置いた定期的な経過観察が重要である.

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