2017 年 53 巻 2 号 p. 300-304
今回我々は小児孤立型甲状腺筋線維腫の1 切除例を経験したので報告する.症例は8 歳の男児.左前頸部に腫瘤を触知し,当科を受診した.超音波検査で甲状腺に27×19×24 mm 大の充実性腫瘤を認め,造影CT 検査で多結節型の造影効果のある腫瘤として描出された.各種腫瘍マーカーおよび甲状腺ホルモンは正常範囲内で,穿刺吸引細胞診はclass III であった.手術で腫瘍を核出し,術中迅速病理診断を行ったところ甲状腺髄様癌疑いであったため,甲状腺左葉切除術および患側周囲リンパ節廓清術を施行した.最終病理診断は筋線維腫であった.筋線維腫は皮膚,皮下,筋肉,骨,および各臓器に発生する稀な良性腫瘍である.孤立型甲状腺筋線維腫は本邦の報告例がなく,欧文を含め2 例目となる極めて稀な疾患であるが,腺腫様甲状腺腫や悪性腫瘍との鑑別が困難なことがあるため,本腫瘍の可能性も念頭に置き,治療方針および術式選択を考慮すべきである.