日本小児外科学会雑誌
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53 巻, 2 号
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おしらせ
原著
  • ―病型及び膵・胆管合流異常との関連について―
    遠藤 耕介, 福澤 宏明, 三島 泰彦, 玉城 昭彦, 森田 圭一, 大片 祐一, 久松 千恵子, 横井 暁子, 前田 貢作
    2017 年 53 巻 2 号 p. 247-251
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】胆道閉鎖症(BA)は進行性に肝線維化をきたす疾患であり,遅滞なく診断・手術を行う必要がある.当院で手術を施行したBA 症例において術前腹部超音波検査(US)でBA に非典型的な所見である「哺乳による胆囊収縮」を認めた症例の特徴について検討した.

    【方法】2005 年から2014 年までの10 年間に当院で葛西手術を施行したBA 症例のうち腹部US で胆囊収縮を評価した12 例を対象とし,胆囊収縮あり群(4 例)と胆囊収縮なし群(8 例)の2 群に分けて,性別,手術時日齢,術前T-Bil,病型,術後3 か月T-Bil,術後1 年自己肝生存率を比較検討した.

    【結果】両群間で性別,手術時日齢,術前T-Bil,術後3 か月T-Bil,術後1 年自己肝生存率に有意な差を認めなかったが,病型に有意差を認めた.胆囊収縮あり群は全例が下部胆管分類で総胆管開存型(a 型)であり,4 例中2 例で膵・胆管合流異常を認めた.

    【結論】a 型のBA では術前腹部US で胆囊が描出され収縮を認めることがあり注意を要する.また,a 型BA では高率に膵・胆管合流異常を合併している可能性があり,今後の検討を要すると思われた.

  • 中神 智和, 土岐 彰, 渡井 有, 大橋 祐介, 田山 愛, 杉山 彰英, 中山 智理, 鈴木 孝明
    2017 年 53 巻 2 号 p. 252-257
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】多精巣症は,「同一固体に3 個以上の精巣が存在する先天奇形」と定義される稀な疾患である.われわれは多精巣症の臨床像,治療方針について検討した.

    【方法】対象は,昭和大学病院および関連病院3 施設において5 年間に経験した多精巣症の5 症例をもとに,後方視的に検討を行った.

    【結果】全例3 歳未満で,左側に存在し,停留精巣の手術を契機に診断した.1 例は片側に3 個の精巣を有し,内2 個は腹腔内に位置していた.4 例は,鼠径管内に2 個の精巣があった.いずれも温存し,精巣固定術を行った.術後,1 例は2 個の精巣すべてに発育を認めた.固定した 2 個の精巣中1 個の精巣に萎縮を認めたのは3 例あり,1 例はすべての精巣に萎縮を認めたため摘出した.

    【結論】余剰精巣は,腫瘍化と造精能の欠如を理由に摘出されることが多い.海外のレビュー140 例中,悪性腫瘍の合併は5.7%で,全例高位に位置していた.造精能の欠如例は26%で,多精巣の50%以上が造精能を有していた.文献的考察から,治療方針として精管との交通性がある小児例では温存し,成人例でも生検後に方針を決めるようにしたい.

  • ―第44回九州小児外科研究会アンケート調査より―
    古賀 義法, 財前 善雄, 後藤 由紀子, 石井 生, 稲富 香織
    2017 年 53 巻 2 号 p. 258-265
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】九州小児外科研究会の会員施設に小児の栄養に関する様々な問題についてアンケート調査を行い,結果を集計し考察を加え報告する.

    【方法】25 施設を対象とした.アンケート内容は1.術前経口補水療法,2.栄養剤の半固形化,3.中心静脈カテーテル,4.微量元素,5.カルニチン,6.Omegaven® の使用状況,7.nutrition support team(NST)の稼働状況とした.

    【結果】24 施設より回答が得られた.術前の経口補水療法(ORT)を導入している施設は8 施設であった.鼠径ヘルニア根治術等の小手術が主な対象で,術前2 時間前までORT を行う施設が多くみられた.栄養剤の半固形化は11 施設で行われ,主な対象は重症心身障碍児や胃食道逆流症であった.投与理由は下痢の防止が最も多く,投与経路は胃瘻で投与方法はボーラス投与であった.乳児に対する末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)は17 施設で使用されていた.中心静脈カテーテルによる在宅栄養管理を行っている施設は10 施設であった.Fe,Zn,Se,Cu などの微量元素欠乏を11 施設で経験していた.Se 測定は14 施設で行われており,主な対象は長期TPN 症例であった.カルニチンの測定は9 施設で行われており,うち5 施設で欠乏症を経験していた.欠乏症の治療としてレボカルニチンの投与などが行われていた.Omegaven® は3 施設で使用経験があった.対象疾患は短腸症候群やヒルシュスプルング病類縁疾患等であり,全例症状が改善したとの回答を得た.NST は24 施設中23 施設で稼働しておりうち17 施設でNST 加算が算定されていた.NST を主導している科は,小児外科が11 施設と最も多かった.

    【結論】今回のアンケート調査で九州地区の小児栄養に関する現状と問題点が明らかとなった.

症例報告
  • ―経カテーテル動脈塞栓術と腎摘除術の組み合わせ治療―
    前岡 瑛里, 益子 貴行, 花田 学, 古屋 武史, 杉藤 公信, 池田 太郎, 越永 従道
    2017 年 53 巻 2 号 p. 266-271
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は13 歳女児.机から転落し右側腹部を強打し,プレショック状態で救命センターへ搬送された.腹部造影CT 検査で右腎外傷IIIb, H2, U2(日本外傷学会腎損傷分類2008)と診断した.バイタルサインを安定させ保存的治療を開始した.受傷4 日目に発熱し,右腎周囲の血腫内気腫像と尿培養検査で細菌が検出され患側腎の感染と判断した.受傷11 日目のCT 検査で右腎動脈本幹および腎実質内に仮性動脈瘤を認め,増大傾向があることから保存的加療の継続は困難と考えた.仮性動脈瘤が腎動脈本幹に存在することから腎摘除術の適応と判断した.右腎動脈本幹の仮性動脈瘤に対して術前に経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を行い,突発的な瘤破裂と術中大量出血への予防策を行ったことで,待機的にかつ安全に腎摘出術を施行しえた.現在退院後1 年になるが,片腎に伴う腎機能低下を認めていない.腎動脈本幹の仮性動脈瘤に対し手術が余儀なくされた場合,術前TAE は治療の一助となり得る.

  • 東尾 篤史, 高間 勇一, 三藤 賢志, 中岡 達雄, 米田 光宏, 中村 哲郎
    2017 年 53 巻 2 号 p. 272-276
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    近年ロタウイルス感染性胃腸炎予防のためにワクチン投与が行われている.ワクチンの副作用として腸重積症が知られているが,今回我々はロタウイルスワクチン初回投与後に腸重積症を発症し,非観血的整復中に消化管穿孔をきたし手術を要した症例を経験したので報告する.症例は2 か月男児.嘔吐と血便を主訴に前医受診.腹部CT 検査で腸重積症と診断された.初発症状から41 時間後に非観血的整復を施行されたがその途中で穿孔をきたし当院に搬送,緊急開腹術にて腸切除および腸瘻設術を行った.症状発現の4 日前にロタウイルスワクチンの初回接種の既往があったが,家族はワクチン接種後の腸重積症発症リスクの認識が不充分であり,そのため医療機関受診が遅くなった可能性が考えられた.ロタウイルスワクチン接種にあたっては,事前の患者家族への十分な情報提供が重要である.

  • 大西 峻, 向井 基, 中目 和彦, 矢野 圭輔, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 川野 孝文, 加治 建, 家入 里志
    2017 年 53 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    症例1 は2 歳男児.胎便性腹膜炎,回腸閉鎖症で1 生日に手術施行し,残存小腸95 cm(残存回腸0 cm)となった.外来フォロー中に大球性貧血を認め,ビタミンB12(VB12)欠乏性巨赤芽球性貧血でVB12 投与を開始され貧血は改善した.症例2 は10 歳男児.小腸閉鎖で出生17 時間で手術施行し,残存小腸45 cm(残存回腸5 mm)となった.10 歳時に易疲労感,食欲不振が出現し,鉄欠乏性貧血とされ,鉄剤投与された.しかし貧血に改善なく,その後汎血球減少を認めたため,精査の結果VB12 欠乏性巨赤芽球性貧血と診断された.VB12 投与で貧血は改善した.VB12 欠乏は不可逆的神経障害の原因になるため,吸収障害による欠乏症を起こす可能性のある短腸症候群の患児では,長期フォローが重要である.VB12 欠乏を念頭においた注意深いフォローによる早期診断と治療が必要であると考えられた.

  • 桑原 強, 河野 美幸, 安井 良僚, 里見 美和, 城之前 翼, 西田 翔一
    2017 年 53 巻 2 号 p. 282-288
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    小児の非ナッツ類の気道異物の5 症例の治療経験を通して,種々の異物に対する気管支鏡・鉗子の選択法について検討した.症例1:1 歳11 か月女児のエビ誤嚥.症例2:10 か月男児のコイル型バネ誤嚥.症例3:5 歳8 か月男児のビーズ誤嚥.症例4:9 歳女児の歯牙誤嚥.症例5:7 歳男児の歯牙誤嚥の5 症例.症例1,2,3 は軟性気管支鏡で,症例4 は硬性気管支鏡を,症例5 は硬性鏡と軟性鏡を併用し,フォガティーカテーテルも用いて摘出を行った.異物の大きさ・形・硬さ・位置の把握と気管支鏡の特徴を生かし,気管支鏡や気管支鏡以外の器具を選択使用することで様々な気道異物に対応することができる.

  • 越智 崇徳, 山高 篤行, 古賀 寛之
    2017 年 53 巻 2 号 p. 289-294
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    滑膜肉腫は若年成人の四肢関節近傍に好発する悪性軟部腫瘍で,小児の縦隔発生は極めて稀であり,標準的な治療指針は確立していない.症例は14 歳女児.上大静脈症候群を呈して受診し,画像検査で上前縦隔腫瘍を認めた.腫瘍は上大静脈内腔を完全に閉塞して右房内まで進展し,すでに肝,肺に多発転移を認めた.急速に増大する右房内の腫瘍が三尖弁に嵌頓する可能性を考慮し,準緊急で右房内腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査で上皮様組織の増殖を認め,遺伝子診断でキメラ遺伝子SYT-SSX2 融合遺伝子が陽性であり,単相上皮型滑膜肉腫の診断に至った.術後化学療法により,原発巣及び遠隔転移巣の縮小が得られたため,原発巣の残存腫瘍摘出術を施行し,腫瘍を全摘出し得た.術後,脳や肺に遠隔転移を認めたが,それぞれ放射線治療や肺葉部分切除により遠隔転移巣の消失を得た.しかし,その後脳梗塞を発症し,初回手術から2 年11 か月で永眠した.

  • 高見 尚平, 五嶋 翼, 加藤 怜子, 高橋 正貴, 魚谷 千都絵, 佐藤 かおり, 石丸 哲也, 新井 真理, 杉山 正彦, 藤代 準
    2017 年 53 巻 2 号 p. 295-299
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は23 歳のマルファン症候群の女性.漏斗胸に対してpectus bar 留置後21 か月であった.当院定期受診時のレントゲン写真にて右気胸を指摘された.症状が軽微であり外来経過観察となった.受診後8 日目に呼吸困難感の増悪があり当院救急搬送された.搬送時はIII 度の気胸を認め,胸腔ドレナージによる保存的治療を開始した.その後も気瘻が続いたため,保存的治療に抵抗性の気胸と診断し,5 入院病日に胸腔鏡下手術を行った.胸腔鏡にて観察すると混濁した胸水と肺と胸壁との癒着を広範囲に認め気胸と膿胸の併発と診断した,癒着を剥離して膿瘍腔を単房化し肺尖部のbulla は自動縫合器にて切除した.bar の胸腔内露出部は全周性に肉芽に覆われていた.bar へ感染が波及することはなく,術後6 週間の抗生剤治療にてCRP が陰性化し,外来経過観察となった.bar 留置中に発症した気胸は,本症例も含めて10 例の報告があり,そのうち8 例で胸腔鏡下bulla 切除術が施行されていた.外科治療が行われた8 例全例において胸腔鏡下に完遂でき,かつbar も温存できていた.bar 留置中の気胸は通常の自然気胸よりも外科治療を要する症例が多く保存的加療が奏功しにくい可能性が考えられた.またbar 留置中の胸腔鏡下bulla 切除術は比較的安全に行えると考えられることから,本症例のように気胸から膿胸を発症する可能性もあり,bar 留置中に発症した気胸に対しては初期治療として手術治療を積極的に検討した方が良いと考えられた.

  • 新居 章, 石橋 広樹, 岩村 喜信, 浅井 武, 浅井 芳江
    2017 年 53 巻 2 号 p. 300-304
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    今回我々は小児孤立型甲状腺筋線維腫の1 切除例を経験したので報告する.症例は8 歳の男児.左前頸部に腫瘤を触知し,当科を受診した.超音波検査で甲状腺に27×19×24 mm 大の充実性腫瘤を認め,造影CT 検査で多結節型の造影効果のある腫瘤として描出された.各種腫瘍マーカーおよび甲状腺ホルモンは正常範囲内で,穿刺吸引細胞診はclass III であった.手術で腫瘍を核出し,術中迅速病理診断を行ったところ甲状腺髄様癌疑いであったため,甲状腺左葉切除術および患側周囲リンパ節廓清術を施行した.最終病理診断は筋線維腫であった.筋線維腫は皮膚,皮下,筋肉,骨,および各臓器に発生する稀な良性腫瘍である.孤立型甲状腺筋線維腫は本邦の報告例がなく,欧文を含め2 例目となる極めて稀な疾患であるが,腺腫様甲状腺腫や悪性腫瘍との鑑別が困難なことがあるため,本腫瘍の可能性も念頭に置き,治療方針および術式選択を考慮すべきである.

  • 矢部 清晃, 福澤 宏明, 久松 千恵子, 山木 聡史, 前田 貢作
    2017 年 53 巻 2 号 p. 305-309
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    小児副腎皮質腫瘍は男性化徴候などの内分泌症状を呈することが多く,腫瘍出血で発見されることは稀である.症例は8 か月女児.嘔吐・腹部膨満を主訴に来院した.高度の貧血を認め,超音波検査やCT で右副腎出血や右副腎腫瘍の腫瘍出血が疑われた.腫瘍マーカーは陰性で,内分泌症状はなかったが,血中DHEA-S,17αOHP の上昇を認めた.血腫消褪後に撮影したMRI で,右副腎に腫瘍性病変を認め,右副腎皮質腫瘍と診断し,手術を施行した.腫瘍は転移や局所浸潤はなく,被膜破綻せず完全切除した.腫瘍径は55×40 mm,重量31 g であった.Wieneke criteria では3 項目陽性でintermediate clinical outcome category であった.術後5 か月経過するが再発はない.小児副腎皮質腫瘍では被膜破綻なく完全切除することで予後が改善する.本例は完全切除したが,腫瘍出血による術前の被膜破綻は否定できず慎重な経過観察を要する.

  • 藤村 匠, 内田 豪気, 春松 敏夫, 加藤 源俊, 石岡 茂樹, 小森 広嗣, 下島 直樹, 佐藤 裕之, 廣部 誠一
    2017 年 53 巻 2 号 p. 310-314
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    今回,我々は膣欠損を合併した直腸膣前庭瘻に鎖肛根治術と同時に小腸グラフトを用いた膣形成を施行した1 例を経験したので報告する.症例は9 か月の女児.出生時に肛門を認めず,日齢2 に人工肛門造設された後に当院紹介となった.直腸膣前庭瘻に対する術前造影で腟欠損に気づき,腹腔鏡による内性器精査で遠位膣欠損と左右に分かれた子宮,正常の卵巣を認め,染色体核型は46XX で,Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser 症候群と診断された.本例は体重増加を待って1 歳11 か月時にanterior sagittal anorectoplasty(ASARP)と同時に小腸グラフトを利用した膣形成が行われた.女児鎖肛・前庭瘻症例は婦人科系臓器の形成異常をしばしば伴う.会陰部所見のみでそれらを把握することは困難で,術前造影時に膣造影で診断し,同時に肛門形成・膣形成を行うことは治療戦略として有用である.

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