日本小児外科学会雑誌
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症例報告
pectus bar留置中に気胸から膿胸に至った1例
高見 尚平五嶋 翼加藤 怜子高橋 正貴魚谷 千都絵佐藤 かおり石丸 哲也新井 真理杉山 正彦藤代 準
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キーワード: 漏斗胸, 気胸, 膿胸, 胸腔鏡
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2017 年 53 巻 2 号 p. 295-299

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抄録

症例は23 歳のマルファン症候群の女性.漏斗胸に対してpectus bar 留置後21 か月であった.当院定期受診時のレントゲン写真にて右気胸を指摘された.症状が軽微であり外来経過観察となった.受診後8 日目に呼吸困難感の増悪があり当院救急搬送された.搬送時はIII 度の気胸を認め,胸腔ドレナージによる保存的治療を開始した.その後も気瘻が続いたため,保存的治療に抵抗性の気胸と診断し,5 入院病日に胸腔鏡下手術を行った.胸腔鏡にて観察すると混濁した胸水と肺と胸壁との癒着を広範囲に認め気胸と膿胸の併発と診断した,癒着を剥離して膿瘍腔を単房化し肺尖部のbulla は自動縫合器にて切除した.bar の胸腔内露出部は全周性に肉芽に覆われていた.bar へ感染が波及することはなく,術後6 週間の抗生剤治療にてCRP が陰性化し,外来経過観察となった.bar 留置中に発症した気胸は,本症例も含めて10 例の報告があり,そのうち8 例で胸腔鏡下bulla 切除術が施行されていた.外科治療が行われた8 例全例において胸腔鏡下に完遂でき,かつbar も温存できていた.bar 留置中の気胸は通常の自然気胸よりも外科治療を要する症例が多く保存的加療が奏功しにくい可能性が考えられた.またbar 留置中の胸腔鏡下bulla 切除術は比較的安全に行えると考えられることから,本症例のように気胸から膿胸を発症する可能性もあり,bar 留置中に発症した気胸に対しては初期治療として手術治療を積極的に検討した方が良いと考えられた.

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