日本小児外科学会雑誌
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症例報告
家族内発症したキノコ中毒後に発症した小児急性虫垂炎の1例
古谷 裕一郎吉村 隆宏廣谷 太一下竹 孝志
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2017 年 53 巻 4 号 p. 930-933

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抄録

今回我々は,毒キノコによる食中毒を契機に発症した急性虫垂炎の1例を経験したため報告する.症例は11歳,男児.山で採取したキノコを家族4人で摂取した.食後3時間後に母,弟,男児の3人が嘔気,腹痛の症状が出現したがしばらく様子をみていた.翌朝になると母と弟の症状は改善したが,男児に強い右下腹部が出現したため当院を受診した.血液検査にて白血球数の上昇と腹部CTにて虫垂腫大と腹水貯留を認めたため,急性虫垂炎と診断し腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.手術所見は虫垂の腫大と発赤を認め,回腸には回腸炎により広範囲にわたり浮腫状変化を認めた.術後経過は良好で術後5日目に退院した.家族が食したキノコを改めて確認すると,毒キノコであるツキヨタケであった.自験例の急性虫垂炎の発症の機序として,毒キノコによる回腸炎により回盲部に炎症が波及し,腸管粘膜の浮腫により虫垂の閉塞をきたしたためと考えられた.

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