2017 年 53 巻 5 号 p. 1019-1022
症例は6歳,女児.4歳時より左鼠径部の膨隆を認め,5歳8か月時に,左外鼠径ヘルニアの診断にてPotts法による根治術を施行した.術後,左鼠径部の膨隆の再発を認め再度外来受診された.内鼠径ヘルニアもしくは外鼠径ヘルニアの再発が疑われたが,術前の診察・超音波検査では診断が困難であった.再手術はまず,鼠径法によるアプローチを行った.内鼠径ヘルニアの所見は確認できたが,術後の癒着のため内鼠径輪の観察は困難であった.次に,腹腔鏡を用いて観察したところ内鼠径輪の閉鎖が確認でき,内鼠径ヘルニア領域の腹壁の脆弱性を認め鼠径法による所見と合致した.さらに,内鼠径ヘルニア領域だけでなく,内鼠径輪近傍にまで及ぶ広範な腹壁の脆弱性を認めたため,鼠径アプローチによるメッシュを用いた腹壁補強を施行した.その際,腹腔鏡下に腹壁の脆弱な範囲を正確に同定することが可能であった.術後,6か月が経過するが再発所見を認めていない.