小児大腸癌は診断時点で進行例が多く,予後不良と言われており,早期発見・治療が重要である.大腸癌の発症リスクに,5q21-22に局在するAPC遺伝子変異を原因としたAPC関連ポリポーシスがあげられる.APC関連ポリポーシスは家族性大腸腺腫症,Gardner症候群,Turcot症候群でみられることが一般的であるが,同部を含む染色体異常でも発症する.今回,5q欠失症候群(5q–)を有する若年男性に発症した直腸ポリープが,経過観察中断中に発癌したと考えられた直腸癌の1例を経験した.症例は19歳男性.生後4か月時,乳児健診で追視しないなどの異常を指摘され,5q–と診断された.9歳時,大腸内視鏡検査(CS)で大腸ポリポーシスを認め,定期フォローを計画していたが自己中断していた.19歳時,血便を主訴にCSを施行したところ,直腸に2型腫瘍を認め,生検で直腸癌と診断した.発癌リスクを有する場合,幼少期から厳重な経過観察が重要であると思われた.