2017 年 53 巻 6 号 p. 1181-1185
脂肪芽腫は乳幼児の体幹および四肢に好発する比較的稀な良性腫瘍である.無痛性で急速増大傾向を示すことから脂肪肉腫との鑑別が問題となる.臀部に発生したものはこれまでに8例の報告のみであり,いずれも2歳以下であった.今回,学童の臀部に発生した脂肪芽腫を経験したので報告する.症例は7歳の男児で川崎病の既往があるが合併症なく経過している健康な児であった.右臀部に徐々に増大する無痛性腫瘤を認め受診した.身体所見で同部にクルミ大の可動性良好な弾性硬の腫瘤を認め,MRIにて境界明瞭な類円形腫瘤を示し,T1およびT2強調画像で高信号,脂肪抑制を認めた.DWIやSTIRでは高信号であり脂肪成分以外の混在も考慮され術前に奇形腫が疑われた.腹臥位で臀裂に沿って切開し,被膜に覆われた腫瘍は一塊として切除可能であった.合併症なく術後7日で退院し,病理診断は脂肪芽腫であった.