2017 年 53 巻 6 号 p. 1176-1180
ヘルニア囊に異所性肝組織の迷入を認めた先天性右横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は在胎37週,体重2,480 gで出生した女児で,出生前の画像検査で,右胸腔内のほとんどが脱出臓器で占められ,重度の肺低形成が予想された.しかし,出生後はgentle ventilationにより呼吸状態は比較的早期に安定化し,日齢2に根治術を施行した.横隔膜内側2/3が欠損した有囊性横隔膜ヘルニアであり,ヘルニア囊切除後に欠損部をGore-Tex® sheetで閉鎖した.術後経過は比較的良好であった.切除したヘルニア囊は病理学的に異所性肝組織を有していた.ヘルニア囊への異所性肝組織迷入は稀な所見であるが,先天性横隔膜ヘルニアの成因を発生学的に考察する上で興味深い所見であった.