2017 年 53 巻 7 号 p. 1311-1315
下大静脈に浸潤した肝芽腫に対する生体肝移植においては,その近位側での下大静脈の確保と血行再建が必要となるため,体外循環が有用であることがある.我々の施設で,最近経験した3例の生体肝移植の外科的戦略について報告する.症例1は,右房進展が見られたPOSTEXT IVの症例で,体外循環下に腫瘍を完全摘出し,自己心外膜パッチを用いて心囊内下大静脈欠損部を閉鎖した.症例2は,術前に下大静脈が完全に閉塞し,肝内のシャントを介して下半身の血流が還流していた.そのため,ドナーの浅大腿静脈を使用して下大静脈の再建を行った.症例3は,同様に化学療法後に下大静脈への浸潤が否定できず,腫瘍破裂を防ぎ安全に腫瘍を摘出するために体外循環を併用し,無血野で肝全摘を行った.3例いずれも乳幼児症例であるが,下大静脈浸潤が存在する困難な肝芽腫に対して,体外循環を積極的に用いることは,安全性かつ根治性を追求する上で有用である.