日本小児外科学会雑誌
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症例報告
腫瘍自然破裂による持続性出血に対し経カテーテル的動脈塞栓術施行後に摘出術を行った腎芽腫の1例
小林 完平林 健木村 俊郎齋藤 傑袴田 健一
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2018 年 54 巻 5 号 p. 1112-1116

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抄録

症例は1歳6か月の男児.腹部腫瘤を主訴に前医を受診し,造影CTで右腎芽腫が疑われ入院となった.入院当日の夜間より頻脈を認めた.貧血の進行,造影CTで大量の腹水を認めた.腫瘍自然破裂による腹腔内出血の診断で当院へドクターヘリ搬送となった.全身状態の安定化を目的に手術に先行して経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)を行う方針とした.選択的右腎動脈造影でextravasationを認め,ゼラチンスポンジで塞栓した.翌日,手術を施行した.腫瘍被膜が破綻していたがTAEにより良好な止血が得られていた.病理所見で腎芽腫の診断となった.手技の煩雑性,困難性から小児固形腫瘍破裂による出血に対してのTAEは,特に幼児例では稀であるが,出血コントロール困難例では全身状態の安定化に寄与し,安全,迅速な治療の一助となり得ると考えられた.

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