2018 年 54 巻 5 号 p. 1117-1123
新生児期に発症する先天性梨状窩瘻は頸部腫瘤により急激な症状を呈することがある.今回,呼吸困難で発症した新生児梨状窩瘻3例の報告に加え本邦報告例の集積結果より考察する.【症例1】2生日より発熱と呼吸障害を呈し,4生日に心肺停止状態となり気管内挿管により蘇生された.その際に左頸部腫瘤に気づかれ,囊胞穿刺造影で瘻孔を確認,26生日に摘出術を施行.【症例2】2生日に左頸部腫瘤による吸気性喘鳴が出現,MRI検査にて気泡・鏡面像を伴う囊胞を認め気管内挿管を必要とした.穿刺ドレナージの効果は一時的で,呼吸困難が持続したため摘出術を施行.【症例3】出生前より左頸部腫瘤を指摘され,出生後に呼吸障害と感染症状を認めたため囊胞の穿刺ドレナージが施行された.囊胞造影で瘻孔を認め,26生日に摘出術を施行.結語:呼吸障害を伴う新生児期発症の先天性梨状窩瘻に対しては頸部腫瘤の症状改善に加え早期手術を考慮する必要がある.