2019 年 55 巻 2 号 p. 236-241
【目的】近年,小児急性虫垂炎に対し,保存的治療が奏功するとの報告が散見されるようになった.当院における単純性虫垂炎に対する保存的治療の成績を検討し,さらに通院治療の可能性についても検討した.
【方法】2007年1月から2017年12月までにCT検査にて急性虫垂炎と診断した212例中,単純性虫垂炎と診断された症例は168例であった.初期治療として保存的治療を行った86例を対象とし,診療録より後方視的に検討した.
【結果】平均年齢10.8歳(5~15歳),男児49例,女児37例.48例は入院治療,38例に通院治療を行った.入院治療群の平均入院期間は4.6日(2~9日)であった.保存的治療が奏功せず手術を行った症例は3例(入院治療群/通院治療群:2/1例)(3.5%)あり,治療成功率は入院治療群96%,通院治療群97%であった.保存的治療において合併症例は認めなかった.初回保存的治療が奏功した83例中,虫垂炎の再発を8例(9.6%)に認めた.平均再発時期は4.4か月(3~17か月).このうち5例は再発時に手術を行い,3例は再度保存的治療を行ったのち,待機的虫垂切除を行った.さらに再発を認めなかった75症例中7例に予防的手術を行った結果,最終的に15例(18.1%)で虫垂切除を行った.残る68例(81.9%)は再発なく経過観察中である.
【結論】小児単純性虫垂炎の保存的治療の奏功率は高く,また約8割の症例で再発なく経過観察中である.さらに通院治療での抗菌薬管理でも治療成績は良好であり,治療の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された.