2019 年 55 巻 5 号 p. 983-987
症例は14歳女児.体育の時間に突然の左側腹部痛と嘔気を自覚し,近医を受診した.胸腹部CT検査で腹腔内臓器の胸腔内脱出を認めたため,横隔膜ヘルニアの疑いで当科紹介となった.腹腔鏡下に緊急手術を行い,左Bochdalek孔ヘルニアと診断した.ヘルニア門は約10×3 cm大で,脱出臓器は著明に拡張した胃の3/4,大網,脾臓,副脾2個,結腸脾弯曲部であった.脱出臓器を還納した後に一期的に横隔膜を縫合閉鎖した.経過は良好で,術後4日目に退院した.遅発性先天性横隔膜ヘルニアの報告で,学童期以降に発症する症例は本邦で検索し得た限り17例あった.左側での発症が多く,運動に伴う腹圧の上昇が発症契機となることが示唆された.また,新生児期発症と異なり,消化器症状を呈することが多かった.早期に診断され,緊急手術が行われることが多く予後は良好であった.