2021 年 57 巻 3 号 p. 591-595
【目的】移動性精巣(以下,MT:migratory testis)に対する明確な手術適応基準はなく,各施設の判断に委ねられている.このため,我々は経時的に超音波でMTの精巣長径を計測し,その発育過程で手術適応を決定している.MT術後の精巣発育の有無から,手術適応の妥当性を検討した.
【方法】2006年12月から2018年6月までに当科で両側MTと診断され,3~6か月毎に超音波で精巣長径を計測した全465例を対象とした.手術適応は,A群:片側発育障害―1 mm以上の左右差を認める症例―,B群:両側発育障害―経時的に精巣発育を認めない症例―,C群:挙上精巣にいたった症例であり,全145例―A群65例,B群56例,C群24例―で手術を実施し,術後6か月頃から3~12か月毎に超音波による精巣長径の計測を行った.今回,術後に超音波でフォローしたA群26例,B群48例を検討した.
【結果】A群26例中,18例(69%)で術後左右差が消失した.術後左右差が残存した8例(31%)中,7例は左右差が拡大することなく両側精巣発育を認めた.B群48例中,36例(75%)で術後に両側精巣の発育を認め,発育確認時期は術後平均12.5か月だった.術後発育のない12例中,術後12か月以上経過する7例では,発育を認めた症例より初診の月齢が高く,精巣サイズも標準より平均約3.3 mm小さかった.
【結論】A群では,術後96%の症例で精巣サイズの左右差の消失または両側精巣の発育を認め,当院の手術適応基準は妥当であると考えられた.B群では,術後1年経過すると75%に発育を認めた.初診時の精巣サイズが標準より3 mm以上小さい症例では,より早期に手術するべきと考えた.