日本小児外科学会雑誌
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57 巻, 3 号
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おしらせ
学術集会記録
原著
  • 中田 千香子, 幸地 克憲, 武之内 史子, 松岡 亜記, 矢部 清晃, 古来 貴寛
    2021 年 57 巻 3 号 p. 591-595
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】移動性精巣(以下,MT:migratory testis)に対する明確な手術適応基準はなく,各施設の判断に委ねられている.このため,我々は経時的に超音波でMTの精巣長径を計測し,その発育過程で手術適応を決定している.MT術後の精巣発育の有無から,手術適応の妥当性を検討した.

    【方法】2006年12月から2018年6月までに当科で両側MTと診断され,3~6か月毎に超音波で精巣長径を計測した全465例を対象とした.手術適応は,A群:片側発育障害―1 mm以上の左右差を認める症例―,B群:両側発育障害―経時的に精巣発育を認めない症例―,C群:挙上精巣にいたった症例であり,全145例―A群65例,B群56例,C群24例―で手術を実施し,術後6か月頃から3~12か月毎に超音波による精巣長径の計測を行った.今回,術後に超音波でフォローしたA群26例,B群48例を検討した.

    【結果】A群26例中,18例(69%)で術後左右差が消失した.術後左右差が残存した8例(31%)中,7例は左右差が拡大することなく両側精巣発育を認めた.B群48例中,36例(75%)で術後に両側精巣の発育を認め,発育確認時期は術後平均12.5か月だった.術後発育のない12例中,術後12か月以上経過する7例では,発育を認めた症例より初診の月齢が高く,精巣サイズも標準より平均約3.3 mm小さかった.

    【結論】A群では,術後96%の症例で精巣サイズの左右差の消失または両側精巣の発育を認め,当院の手術適応基準は妥当であると考えられた.B群では,術後1年経過すると75%に発育を認めた.初診時の精巣サイズが標準より3 mm以上小さい症例では,より早期に手術するべきと考えた.

  • 藏野 結衣, 城田 千代栄, 檜 顕成, 田井中 貴久, 住田 亙, 横田 一樹, 牧田 智, 滝本 愛太朗, 内田 広夫
    2021 年 57 巻 3 号 p. 596-599
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】腹腔鏡下胆道閉鎖症手術(腹腔鏡下肝門部空腸吻合術)の執刀を熟練した術者に限定する必要性の有無を明らかにすることを目的として,自施設での治療成績を後方視的に検討した.

    【方法】2014年4月から2018年8月の期間中,胆道閉鎖症に対して当院で腹腔鏡下肝門部空腸吻合術を施行した35例を対象とした.腹腔鏡下肝門部空腸吻合術を5例以上経験した術者が執刀した患者(A群:12例)と執刀経験4例以下の術者が執刀した患者(B群:23例)とに分類し,手術,術後経過と術後6か月,1年,2年の各時点における無黄疸自己肝生存についてそれぞれ統計学的解析を行い比較,検討した.

    【結果】A群とB群で手術日齢,体重,出血量,ドレーン抜去時期,経口開始時期に有意差は認められなかったが,手術時間はA群が有意に短かった(p=0.0049).無黄疸自己肝生存率は術後6か月(A群58.3%,B群60.9%,p=0.506),術後1年(A群66.7%,B群65.2%,p=0.932),術後2年(A群58.3%,B群56.5%,p=0.918)でいずれの時点でも有意差は認められなかった.

    【結論】今回の検討では,腹腔鏡下胆道閉鎖症手術に熟練した術者の指導の下では,執刀経験量による減黄率の有意な差は認められなかった.

  • 林 健太郎, 石丸 哲也, 小俣 佳菜子, 川嶋 寛
    2021 年 57 巻 3 号 p. 600-606
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】超低出生体重児の消化管穿孔では人工肛門造設術を選択することが多いが,合併症に難渋することが多い.腸管と腹壁の縫合を行わないsutureless enterostomy(以下S法)が報告されているが,その有用性は明らかでない.今回腹壁と縫合固定を行う従来法とS法について検討した.

    【方法】2015/1/1~2018/12/31の期間に埼玉県立小児医療センターで出生体重1 kg以下,日齢10以下で人工肛門造設術を施行した症例を抽出し,S法と従来法について背景因子,手術成績,合併症等を後方視的にまとめた.術後早期を術後30日以内,それ以降を晩期とした.

    【結果】S法は5例(4名),従来法は5例であった.在胎週数(以下,中央値[範囲])はS法で24週3日[23週3日~25週2日],従来法で24週1日[23週5日~25週6日],出生体重はS法で605 g[568~758 g],従来法で632 g[468~801 g],手術時日齢はS法5日[2~6日],従来法7日[4~8日],手術時間はS法91分[33~118分],従来法95分[56~100分],出血量はS法3.0 ml[0.0~6.7 ml],従来法22.0 ml[0.0~32.0 ml]であった.術後人工肛門関連合併症は,S法2例(術後早期1例,晩期2例),従来法4例(術後早期2例,晩期3例)で,そのうち緊急手術は,S法で術後晩期に2例,従来法で術後早期に1例,晩期に1例生じた.

    【結論】S法は出血量・術後早期合併症は改善する可能性があるが,術後晩期で再手術を要する合併症が増加する可能性があった.S法では人工肛門閉鎖の時期の検討が今後必要である.

  • 城之前 翼, 坂井 清英, 相野谷 慶子
    2021 年 57 巻 3 号 p. 607-612
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】当科では精索静脈瘤に対して2008年に顕微鏡下手術を導入してから,2010年に超音波ドプラ血流計による精巣動脈の同定を,2012年にインジゴカルミン液によるリンパ管の同定を開始した.治療方法確立後の治療成績に関して検討した.

    【方法】当科で2012年8月~2019年12月までの7年5か月間に経験した精索静脈瘤の顕微鏡下手術症例に関して後方視的に検討した.なお,両側手術例,他疾患同時手術例,鼠径部手術既往例,術後経過観察期間3か月未満の症例,器械不具合例は除外した.

    【結果】症例は36例で,患側は全例左側だった.年齢は中央値12歳(10~16歳)で,静脈瘤の分類はGrade 2が6例,Grade 3が30例だった.アプローチは鼠径管下[鼠径管外]が16例,鼠径管内が20例だった.手術時間は平均132.5分(83~209分)だった.全例で精巣の術後萎縮は認めず,再発例は1例(2.8%)で,精巣水瘤の発症例はなかった.Catch-up growthは60%で認めた.

    【結論】顕微鏡下精索静脈低位結紮術は他の術式と比べて低侵襲であり,鼠径部切開は小児外科医・小児泌尿器科医には慣れたアプローチであること,超音波ドプラ血流計での動脈同定やインジゴカルミン液でのリンパ管同定により安全性・根治性は確保できること,新生児・乳幼児手術の経験があれば顕微鏡下手術に慣れるのはより容易と考えられることから,推奨できる術式である.治療成績に関しては,catch-up growthを60%に認め,再発率は極めて低かった.有症状例や患側精巣容積が小さい症例では顕微鏡下手術が勧められる.

  • 山口 岳史, 西 明, 鈴木 完, 谷 有希子, 丸山 憲一, 土岡 丘, 小嶋 一幸
    2021 年 57 巻 3 号 p. 613-617
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】極低出生体重児(VLBW)の出生数は増加傾向であり,またその救命率は改善傾向である.近年はその長期予後が問題とされるようになってきている.長期神経学的予後に関わる因子として,今回我々は新生児期の手術に注目し,自験例を用いて検討した.

    【方法】2005年1月から2008年12月までに出生し群馬県立小児医療センターで治療されたVLBWで,6歳時に知能検査を施行している89例を対象とした.新生児期の手術の有無で2群に分け,6歳時の知能指数(IQ)を長期神経学的予後として後方視的に分析した.

    【結果】対象となった症例のうち,手術群は15例,非手術群は74例であった.手術群,非手術群の6歳時のIQの平均はそれぞれ72.7,88.8であり,非手術群の方が有意に高かった(p=0.0024).

    更に手術術式が長期神経学的予後に影響する因子であるかどうかを調べるため,手術群15例を動脈管開存症(PDA)手術群6例と腹部手術群9例に分けて検討した.6歳時IQの平均は80.2,67.7であり,両群の差は統計学的には有意でなかった(p=0.31).

    【結論】VLBWに対する新生児期の手術が長期神経学的予後に影響を及ぼす可能性が示唆された.腹部手術群とPDA手術群の比較にでは統計学的有意差はなかった.手術群のIQの平均は境界領域であり,長期のフォローアップ,心理社会的介入,社会適合へのサポートなどが今後益々重要となる.

症例報告
  • 工藤 渉, 齋藤 武, 照井 慶太, 中田 光政, 小松 秀吾, 原田 和明, 秦 佳孝, 古金 遼也
    2021 年 57 巻 3 号 p. 618-624
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は12歳,女児.腹痛を主訴に近医を受診し,先天性胆道拡張症・急性膵炎の診断で当科紹介となった.MRCP上,拡張した肝外胆管は頭側で左右肝管に分岐し,尾側では膵管に合流した.さらに別の肝外胆管も認められ,胆囊管を分岐し尾側で十二指腸に連なった.ERCP上,両者は左右肝管合流部直下で交通し,拡張胆管は膵管と合流して長い共通管を形成しており,膵・胆管合流異常を伴う重複胆管と診断した.近位胆管は両胆管交通部直上の総肝管で切離し,遠位胆管は膵内で2本の肝外胆管を別個に処理し,肝管空腸吻合術を施行した.重複胆管は非常に稀な病態で,本邦では97例(うち小児11例)を数えるにすぎない.小児例では膵・胆管合流異常を併存することが多く,成人例では悪性腫瘍の合併も散見され,複雑な胆道形態から種々の病態を生じうる.胆管の走行と併存疾患を正確に評価し,適切な治療戦略を立てることが肝要である.

  • 鳥飼 源史, 武藤 充, 野口 啓幸, 杉田 光士郎, 松久保 眞, 町頭 成郎, 山本 剛士, 木部 匡也, 内藤 喜樹, 茨 聡
    2021 年 57 巻 3 号 p. 625-630
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    新生児胃破裂は近年稀な疾患となったが,我々は1年間に4症例のべ5件を経験した.今後の新生児管理に生かすため,自験例の発生原因を文献的に考察検討した.全例が緊急帝王切開で出生した早期産未成熟児で,大弯側の破裂(3件),体部前壁の破裂(2件)は生後早期にみられた.いずれも新生児の胃壁に特徴的な解剖学的脆弱部であった.自験例では,周産期のdiving reflexによる胃壁血流障害に加えて,胎便栓による通過障害,甲状腺機能低下による機能的胃腸蠕動不良,臓器軸性胃軸捻等により胃内圧が耐容上限を超えたことが要因として考えられた.我々は,経時的に注意深く腹部所見の観察を重ねること,適正に上部消化管減圧を維持することの意義を再確認した.これらはNICUでは当然の管理であるが,新生児胃破裂の発症予防策としても重要である.

  • 山道 拓, 西川 正則, 牧野 克俊, 安部 孝俊, 金 聖和, 田山 愛, 正畠 和典, 曹 英樹, 臼井 規朗
    2021 年 57 巻 3 号 p. 631-638
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    肝芽腫の微小肺転移巣を,染色法によるCTガイド下マーキング(以下CT法)を行って切除した症例を経験したので報告する.症例1は肝芽腫が右葉に原発した4歳男児例.肝右葉切除後に出現した1か所の右肺転移巣に対してCT法を行ったのち胸腔鏡下肺部分切除を施行した.症例2は肝芽腫が右葉に原発した1歳男児例.化学療法後も残存する右肺の2か所の微小結節性病変に対してCT法とインドシアニングリーン蛍光法を用いた術中ナビゲーション(以下ICG蛍光法)を併用して肺部分切除を行ったのち,全肝を摘出して肝移植を施行した.症例3は肝芽腫が左葉に原発した3歳男児例.肝左葉切除,化学療法後に残存する7か所の肺の微小結節性病変に対してCT法とICG蛍光法を併用して両側肺の部分切除を施行した.CT法とICG蛍光法を併用することで,肉眼でも触診でも確認できないほど微小な肝芽腫の肺転移巣を確実に切除できると考えられた.

  • 菅井 佑, 飯沼 泰史, 平山 裕, 仲谷 健吾, 愛甲 崇人, 髙城 翔太郎
    2021 年 57 巻 3 号 p. 639-644
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は11歳女児.急激な上腹部の膨隆と発熱・腹痛で救急搬送された.CT検査で肝下面に巨大な囊胞と肝内胆管の拡張を認め,当初は肝十二指腸間膜近傍の腹腔内リンパ管腫と診断した.囊胞が巨大であったため,悪性所見が否定された後の入院後3日目に超音波ガイド下経皮的囊胞穿刺ドレナージを施行した.囊胞が著明に縮小したあとのCT検査で初めて孤立性非寄生虫性肝囊胞(肝囊胞)と診断され,入院7日目に腹腔鏡下開窓術を施行した.手術では術後出血・胆汁漏防止のために腹腔鏡用血管シーリングシステムを用いた.術後5日目に合併症なく退院し,術後3か月現在,再発なく経過している.小児巨大肝囊胞は,悪性腫瘍の可能性が極めて低ければ囊胞ドレナージを先行することが症状の緩和だけでなく確定診断や手術にも有用である.

  • 長野 心太, 古川 泰三, 竹本 正和, 竹内 雄毅, 坂井 宏平, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 小西 英幸, 田尻 達郎
    2021 年 57 巻 3 号 p. 645-651
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は7歳男児.急性膵炎時の腹部CTで十二指腸下行脚に囊胞性病変を認め,当院紹介となり,十二指腸重複症と診断された.内視鏡下に囊胞を切開し,ドレナージ目的にERBD tubeを留置した.以後,定期診察していたが,10歳時に腹痛をきたし近医で腸閉塞症と診断され当科紹介となった.腹部CTでドレナージチューブが回腸末端に脱落し閉塞起点となっており,緊急手術を施行した.手術所見では閉塞起点の腸管内に腸石と一塊となったドレナージチューブを認め,Stent-Stone Complex(SSC)による腸閉塞と診断した.ドレナージチューブおよび腸石を摘出し閉塞を解除した.十二指腸重複症は極めて稀な疾患であり,小児例に対する内視鏡治療例の報告は少ない.またSSCは成人例の報告も少なく,検索した限りでは小児例の報告は国内で初めてである.本症例の診断と治療の経過,および合併症として生じた腸閉塞の経過を報告する.

  • 高本 尚弘, 高澤 慎也, 小山 亮太, 西 明
    2021 年 57 巻 3 号 p. 652-655
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    胆道閉鎖症手術は定型化された手術であるが,肝門部結合組織塊切除後の止血法は施設間で異なる.術後の胆汁排泄を考えると確実な止血が得られ,低侵襲であることが理想である.今回胆道閉鎖症と診断された1か月の女児に対して肝門部空腸吻合術を施行した際に止血剤アリスタAH®を使用したところ,良好な止血を得られ術後の減黄も良好であった症例を経験した.アリスタAH®の使用以外に特別な止血操作は要さず,術中術後の輸血も必要としなかった.今後症例数を増やしての検証が必要であるが,低侵襲な止血法である可能性が示唆された.

  • 山師 幸大, 古川 泰三, 竹内 雄毅, 坂井 宏平, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 田尻 達郎
    2021 年 57 巻 3 号 p. 656-662
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は14歳男児.幼少時より便秘を指摘されていた.腹痛出現し,近医にて浣腸,摘便をしていたが,腹満が増強し,嘔吐,頻脈,低血圧を認めるようになり,当院へ救急搬送となった.宿便によるコンパートメント症候群をきたしていると判断し全身麻酔下に摘便を試みたが困難であったため開腹手術に移行し,糞便除去および人工肛門造設術を施行した.術後,ヒルシュスプルング病を考慮し直腸生検および直腸肛門内圧検査を施行したが否定的であった.以後,定期的に腹部単純X線写真,注腸検査で直腸骨盤比と直腸の感覚閾値および最大耐容量を測定し改善傾向を認め,巨大直腸が改善してきたことを確認し術後21か月で人工肛門閉鎖術を施行した.現在,人工肛門閉鎖後3年経過するが,緩下剤の内服のみで排便状況は良好である.今回我々は慢性機能性便秘症による宿便貯留からショック症状をきたした症例に対して緊急手術を施行し,救命し得た極めて稀な症例を経験したので報告する.

  • 岩渕 瀬怜奈, 服部 健吾, 津川 二郎, 西島 栄治, 渡部 彩, 田中 聡志, 中田 有紀, 岸上 真, 長坂 美和子, 池上 等
    2021 年 57 巻 3 号 p. 663-667
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は在胎40週4日,体重2,710 gで出生された男児.上腹部に左下肢を主とした寄生体の結合と臍帯ヘルニアを認め当院へ搬送された.造影CT検査では,自生体の下横隔動脈が体表面で分岐し一方は寄生体へ,一方は臍帯ヘルニア内の囊胞へ向かっていた.日齢5に臍帯ヘルニア根治術を施行.ヘルニア内容は自生体の肝臓の一部と寄生体由来と考えられる両側盲端の腸管であり,後者は摘出した.日齢21に寄生体切離術を施行.寄生体には左下肢,腎臓,膀胱,精巣,陰囊,陰茎が含まれていた.術後経過は良好であり日齢32に退院した.上腹部Heteropagusにおいて寄生体由来の腸管は多様な分布をとり,自生体の臍帯ヘルニア内への迷入や自生体の腸管との連続性を認めることがある.我々は臍帯ヘルニアに寄生体由来と考えられる腸管を認めた上腹部Heteropagusの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

  • 江里口 光太郎, 岡本 晋弥, 鹿子木 悠, 渡邉 健太郎, 片山 哲夫
    2021 年 57 巻 3 号 p. 668-673
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は5歳女児.4日間続く腹痛を主訴に来院し,CT検査で膵臓背側に最大径4.8 cmの炎症性後腹膜囊胞が指摘されたため抗菌薬投与を行い,軽快した.その後外来精査にて囊胞は厚い被膜を有したまま2.5 cmまで縮小傾向を示し,画像上悪性所見を認めず,胃や膵臓など周囲臓器由来ではない気管支原性囊胞などの孤発性良性腫瘤が疑われた.診断及び症状再燃予防目的に炎症軽快5か月後に腹腔鏡下後腹膜囊胞摘出術施行.術後合併症なく,病理診断は気管支原性囊胞で悪性所見は認めなかった.気管支原性囊胞に関しては成人例含め縦隔発生の報告が多く,後腹膜異所性気管支原性囊胞は稀とされる.気管支原性囊胞に関しては加齢とともに増大傾向を示すとされ,多くが良性である一方でわずかだが悪性化の報告もみられる.近年成人例では腹腔鏡下手術報告が散見されるが,小児例の報告は少ない.本症例は炎症後の癒着が強かったが腹腔鏡下全摘が可能であった.

  • 高尾 智也, 上野 悠
    2021 年 57 巻 3 号 p. 674-677
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    患者は11歳,女児.1週間前から軽度の腹痛を認めたが経過観察していた.1日前より腹痛が悪化してきたため当院を受診された.受診時,微熱と右側腹部から右上腹部にかけて著明な圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は軽度だった.腹部超音波検査では,虫垂腫大やリンパ節腫大は認めなかったが,右上腹部に境界不明瞭且つlow echoicな腫瘤を認めた.腹部単純CT検査で大網脂肪織内にwhirl signを認め大網捻転症と診断し,徐々に腹痛が悪化し歩行困難になってきたため,同日単孔式腹腔鏡下手術を施行した.手術所見は,右上腹部で大網が捻転を起こし,捻転部大網は壊死していた.壊死した大網を臍部より体外に引き出し切除した.術後経過良好で術後3日目に退院となった.小児特発性大網捻転症は術前診断が可能であり,単孔式腹腔鏡下手術は低侵襲で有用な治療法であると考える.

  • 竹村 理璃子, 五味 卓, 米田 光宏, 中村 杏子, 廣瀨 雄輝, 山田 弘人, 神山 雅史, 大矢知 真希, 依藤 亨, 増江 道哉
    2021 年 57 巻 3 号 p. 678-683
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は7か月男児.生後4か月頃より低血糖と高インスリン血症を伴う痙攣発作があり,先天性高インスリン血症の疑いで当院紹介となった.ATP依存性Kチャネル遺伝子に父由来の片アレル変異が存在し,PETの集積から膵尾部限局型と診断された.内科治療抵抗性のため,手術目的に当科紹介となった.病変を鏡視下の観察と小開腹下の触診で同定し腹腔鏡補助下膵尾部部分切除術を行い摘出した.摘出直後にオクトレオチド持続皮下注を中止したが低血糖には至らず,完全摘出し得たと判断した.病理組織検査では膵内分泌細胞の過形成を示した.術後は薬物・糖負荷は不要となり,術後9日目に退院.術後1か月目の持続グルコースモニタリングでも低血糖はなく,終診となった.限局型先天性高インスリン血症は,病変の摘出により後遺症なく早期の症状軽快が見込める.本症例においては,腹腔鏡を併用したことで,より低侵襲に小開腹下での完全切除を行うことができた.

  • 吉田 英樹, 窪田 昭男, 西山 方規, 北山 紀州, 荒木 麻利子, 松本 哲平, 中澤 一憲, 須浪 毅, 塚本 義貴, 中尾 照逸
    2021 年 57 巻 3 号 p. 684-689
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は10歳女児.主訴は腹痛と嘔吐.触診にて上腹部に10 cm大の腫瘤を認めた.抜毛と食毛の習癖があり毛髪胃石を疑った.腹部CTでは胃内に気泡を含む巨大な塊を認め,胃内視鏡にて毛髪塊を認めたため毛髪胃石と診断した.内視鏡的摘出困難と判断し,消化管閉塞症状を認めなかったため待機的に手術を施行.臍部にて小開腹し,胃壁を創縁まで引き出して切開した.ALEXIS®ウーンドリトラクターXSを切開部より胃内に挿入し,胃壁を展開,固定した後,直視下に胃石を摘出.胃石重量は290 g,手術時間は110分.摘出後,胃切開部から手袋法にて鏡視下に胃内を観察し,遺残がないことを確認した.経臍的アプローチにて創縁保護具を胃切開部より胃内に挿入することにより,創直下に胃内を目視でき,胃石摘出を施行し得た.胃切開部からの鏡視下観察は,小切開での手術を補う簡便で有効な手段である.症例提示とともに文献的考察を加えて報告する.

  • 藤枝 悠希, 福澤 宏明, 岩出 珠幾, 竹内 雄毅, 畠山 理
    2021 年 57 巻 3 号 p. 690-694
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は14歳男児,総排泄腔外反症の術後であった.突然の上腹部痛を主訴に当院へ救急搬送され,造影CTで胆囊の腫大と壁肥厚と,胆囊に近接する造影効果の低い腫瘤を認めた.胆囊と大網の捻転を疑い緊急手術を施行した.右腹部に回腸人工肛門,左腹壁に導尿路を造設しており,右季肋部斜切開で開腹した.創直下に鬱血した肝臓と拡張した胆囊を認め,胆囊が付着した肝副葉捻転と診断した.捻転解除後,速やかに鬱血は改善したが,再捻転の可能性があり肝副葉と胆囊は摘出した.術後経過は順調で術後5日目に退院した.胆囊床を有する肝副葉捻転の報告は非常に稀である.画像所見で胆囊捻転を疑い胆囊に近接する腫瘤を認めた場合は,肝副葉捻転も鑑別として考慮すべきである.また報告されている胆囊床を有する肝副葉捻転症例は全例腹壁の手術歴を持っており,前腹壁手術を行う際には胆囊周囲の肝副葉の存在を念頭に置く必要があるのではないかと考えられた.

  • 武内 悠馬, 瀧本 篤朗, 嶋村 藍, 津田 知樹
    2021 年 57 巻 3 号 p. 695-699
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は6歳男児.発熱,嘔吐,下痢,腹痛を主訴に近医を受診した.急性胃腸炎の診断で外来加療されたが改善なく,第7病日に前医受診した.その際,採血で著明な炎症所見と腹部CTで骨盤内膿瘍を認めたため当科紹介となった.身体所見で下腹部に限局した腹膜刺激症状を認め,穿孔性虫垂炎に合併した骨盤内膿瘍と診断した.全身状態は保たれていたため保存的加療を選択した.画像所見で骨盤内膿瘍が直腸壁に接していたため,第9病日に超音波内視鏡下経直腸的ドレナージ(本法)を施行した.翌日より解熱し,術後12日の腹部CTで膿瘍腔はほぼ消失を認め,術後14日に退院とした.術後19日,内瘻ステントの一部が肛門縁より脱出したため抜去した.抜去後も再燃を認めず,3か月後に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.小児に対する本法の文献的報告はなく,本症例では低侵襲かつ安全に施行できた.本法は有用な治療選択肢になりうると考えられたため報告する.

  • 児玉 匡, 阪 龍太, 井深 奏司, 黒田 征加, 今福 紀章, 細木 瑞穂, 白河 伸介, 山下 定儀, 山本 暖
    2021 年 57 巻 3 号 p. 700-706
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    腟内異物はあらゆる年齢で起こりえるが,小児ではまれである.われわれは2例の腟内異物を経験したので報告する.症例1は11歳女児.10か月前から悪臭を伴う帯下を認めていた.右下腹部痛を訴えて前医を受診,CTで腟内異物を疑われ当院紹介となった.腹部超音波検査(US),MRI検査から子宮頸部の絞扼が疑われ緊急手術を行った.全身麻酔下に異物摘出を行ったところ,子宮頸部は円筒状の異物に嵌頓していたが,異物除去により色調は改善した.術後,症状は速やかに改善した.虐待対策委員会により性的虐待の可能性は低いと判断され,小児心療内科医の介入を行い退院となった.異物挿入の経緯については不明であった.症例2は13歳女児.自分で鉛筆を挿入したが,キャップが遺残したため来院.特に症状はなし.USとCTで腟内異物を確認し全身麻酔下に摘出を行った.

報告
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