2021 年 57 巻 3 号 p. 596-599
【目的】腹腔鏡下胆道閉鎖症手術(腹腔鏡下肝門部空腸吻合術)の執刀を熟練した術者に限定する必要性の有無を明らかにすることを目的として,自施設での治療成績を後方視的に検討した.
【方法】2014年4月から2018年8月の期間中,胆道閉鎖症に対して当院で腹腔鏡下肝門部空腸吻合術を施行した35例を対象とした.腹腔鏡下肝門部空腸吻合術を5例以上経験した術者が執刀した患者(A群:12例)と執刀経験4例以下の術者が執刀した患者(B群:23例)とに分類し,手術,術後経過と術後6か月,1年,2年の各時点における無黄疸自己肝生存についてそれぞれ統計学的解析を行い比較,検討した.
【結果】A群とB群で手術日齢,体重,出血量,ドレーン抜去時期,経口開始時期に有意差は認められなかったが,手術時間はA群が有意に短かった(p=0.0049).無黄疸自己肝生存率は術後6か月(A群58.3%,B群60.9%,p=0.506),術後1年(A群66.7%,B群65.2%,p=0.932),術後2年(A群58.3%,B群56.5%,p=0.918)でいずれの時点でも有意差は認められなかった.
【結論】今回の検討では,腹腔鏡下胆道閉鎖症手術に熟練した術者の指導の下では,執刀経験量による減黄率の有意な差は認められなかった.