2021 年 57 巻 3 号 p. 695-699
症例は6歳男児.発熱,嘔吐,下痢,腹痛を主訴に近医を受診した.急性胃腸炎の診断で外来加療されたが改善なく,第7病日に前医受診した.その際,採血で著明な炎症所見と腹部CTで骨盤内膿瘍を認めたため当科紹介となった.身体所見で下腹部に限局した腹膜刺激症状を認め,穿孔性虫垂炎に合併した骨盤内膿瘍と診断した.全身状態は保たれていたため保存的加療を選択した.画像所見で骨盤内膿瘍が直腸壁に接していたため,第9病日に超音波内視鏡下経直腸的ドレナージ(本法)を施行した.翌日より解熱し,術後12日の腹部CTで膿瘍腔はほぼ消失を認め,術後14日に退院とした.術後19日,内瘻ステントの一部が肛門縁より脱出したため抜去した.抜去後も再燃を認めず,3か月後に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.小児に対する本法の文献的報告はなく,本症例では低侵襲かつ安全に施行できた.本法は有用な治療選択肢になりうると考えられたため報告する.